傍線部問題について、答案作成の基本姿勢を確認しましょう。
姿勢
「説明」は「傍線部」と「設問」のみを見ている人に対して行うものだと考える。
課題文における「傍線部以外の箇所」を見ていない人に説明をするものと仮想しましょう。
「論点言及」と「表現成熟」
論点言及(言い換え・規定)
「どういうことか」であれば、傍線部における「主語ー述語」といった論理関係を構成する各要素について、より意味が伝わる箇所(論点)を本文別箇所から探し、答案に取り込むことが基本です。
「傍線部にある表現」が比喩的であるとき、本文別箇所に存在する「その実態を示す客観的・一般的な表現」に取り換えることができれば、「傍線部にある比喩的な表現」は答案から除外してよいことになる。傍線部をすでに見ている人(仮想採点者)にとっては、それが「言い換え」であることがわかるからである。
一方で、「傍線部そのものにある表現」が「すでに客観的・一般的な表現」であれば、無理に言い換える必要はないことになる。
ただし、「客観的・一般的な語句」というものは、えてして「多義的」であることが多い。したがって、その「語句」を「一義的・限定的」にすることができるならしたほうがよい。傍線部内の「〇〇」という語句を、「△△な○○は~」あるいは「〇〇は△△であり、~」という具合に規定したほうがよいということである。たとえば、文脈上「現代人」のことを述べていることが明らかであるのに、傍線部で「人」と表現されている場合、答案には「現代人」と書く必要がある。
このように、
「言い換えのための語句」を収集する
「規定のための語句」を収集する
ということが、「論点言及」のために必要なことです。
表現成熟(簡潔化・一般化)
さて、以上の手順をふんで答案に必要な要素(論点)を収集すれば「とりあえず答案」ができるのですが、「とりあえず答案」では、しばしば次のことが起こります。
(a)答案に入れようとしている要素(論点)が冗長な表現である。
(b)答案に入れようとしている要素(論点)が並列・列挙の表現である。
(c)答案に入れようとしている要素(論点)が明確な例示である。
これらの場合、答案の完成にあたって、次の作業を必要とする。
(a)冗長な表現は端的に「圧縮」する。
(b)並列・列挙の表現は「とりこぼしがないように書く」か「一気にまとめる」。
(c)例示は一般的・客観的な表現に修正する。
多くの場合、(b)と(c)は同時に起きている。つまり、「例示」が「列挙」されているようなケースである。
並列されている語句が例示的なものであれば抽象化して一気にまとめる必要がある(一般化)。
ただし、並列されている語句がすでに一般的・客観的なものであれば、並列されている語句をそのまま書いてもよい(枚挙)。
以上のように、答案の作成にあたっては、
〈論点言及〉として「言い換え」や「規定」が必要になります。
そして、〈表現成熟〉として「圧縮」や「一般化(または枚挙)」が必要になります。
したがって、記述答案においては、「言い換え」「規定」「圧縮」「一般化(または枚挙)」の基礎能力が複合的に試されていると考えましょう。
答案の表現における基本方針
「表現」については、細かく言うと次のような方針があります。
(1)指示語は答案に持ち込まない。(指示対象のほうを書く)
(2)比喩は答案に持ち込まない。(実態のほうを書く)
(3)例示は答案に持ち込まない。(一般化する)
(4)並列・列挙的表現には注意する。(枚挙するか、抽象化して一気にまとめる)
(5)客観的かつ一般的な名詞は、傍線部の内外問わず、そのまま書いてよい。
ただし、それが多義的な表現であれば、文脈に即して規定する。
(例)傍線部「背中」 → 説明「他人の背中」
傍線部「人」 → 説明「現代の日本人」
傍線部「時代」 → 説明「近代以前の時代」など
「指示語を答案に持ち込まない」「比喩を答案に持ち込まない」といったものは、答案づくりの基本姿勢です。
逆を言えば、「傍線部」には「指示語」や「比喩的表現」が混入しやすいということです。
それらを「解決」していくことが説明する側の仕事になります。
なお、「指示語」は、「答案の内部の語句」を指しているのであればセーフですが、その場合でも多用は避けましょう。