選択肢問題について
「よい記述答案」を選ぶつもりで解く。
傍線部についての説明を求める選択肢問題というものは、根本的に「記述問題の代わり」に出題されています。
そのため、「記述問題ならどう答えるか」という観点で、それに最も近いものを選ぶ姿勢が重要です。
つまり、ここでも〈論点言及〉と〈表現成熟〉が重要になります。
選択肢は「比較」が必要
ただし、選択肢問題は、「正解」が常に「論理的で美しい表現」になっているとは限りません。
むしろ難しくするために、「正解そのもの」が「それほどよくない」表現になっていることも多いのです。
そのため、正解を決定するにはどうしても「他の選択肢」との比較が必要になります。たとえば〈選択肢③〉が「正解」と考えたとしても、他の〈①②④⑤〉を見ずに「決定」することはできません。「もっとよい選択肢」がある可能性があるからです。
もちろん「単体」として見てはっきり×にできる選択肢もあるのですが、たいていは「2つ残って迷う」ことになります。
そのときこそ「問いとの応答性(どちらがより真摯に問いに答えているか)」という観点で「比較的よいほう」を選ぶことになります。
そのとき「記述問題」のトレーニングを積んでいる受験生は、「こっちは6点でこっちは3点だ」という具合に「優劣」をつけられるのですね。
採点者になったつもりで、以下の「減点要素」があれば△をつけていきましょう。
〈選択肢の減点要素〉
(1)「非対応」(問いに答えていない)
(2)「矛盾」 (逆のことを言っている)
(3)「不合理」(つながりがおかしい)
(4)「極端」 (程度や範囲が明らかにおかしい)
(5)「捏造」 (明らかにその話題がない) *注意
選択肢の減点要素
矛盾(反対のことを述べている)
(a)主張と逆
♠選択肢の内容が、本文の内容(特に筆者の主張)と逆になっている。
本文で「Aである」と述べているのに、選択肢で「Aではない」と説明しているような場合です。
(b)対比概念の混入
♠「Aはαであるが、Bはβである」というような本文中の対比関係を取り違え、「Aは、βである」などと書いてしまっている。
非対応(問いに答えていない)
(c)主題(議題)が違う
♠「傍線部/設問」とは無関係な主題(議題)について語っている。
「主題」は基本的に「主語」が担います。あるいは「目的語」が担います。
たとえば、傍線部には「主語」がないのに、「答案」でそれを補うといったケースで、「別の主語」を持ってきてしまっている選択肢は不適です。
「今その話してないんですけど……」というパターンです。
(d)設問条件無視
♠設問に条件があるのに、その条件に沿っていない解答になっている。
たとえば、次のようなケースです。
********************
☘「具体的に」という条件があるのに「抽象的でぼんやりした解答」になっている
☘「不適当なものを選べ」とあるのに「適当なこと」を述べている
☘「Aが起こることによって、最終的にどうなったのか?」と問われているのに、「最終的な現象」の「手前」までしか答えていない
********************
「設問」をよく見て、設問条件に線を引くなどのくせをつけておくといいですね。
不合理(論理関係がおかしい)
(e)因果関係(前後関係)の逆転
♠本文中で「AゆえにB」となっているものを、選択肢では「BゆえにA」としている。
小説問題で、時系列が逆になってしまっているケースもこれです。
(f)因果関係(前後関係)の混乱・こじつけ
♠本文中では明らかに因果が認められないものを、選択肢で無理やり因果関係にしてしまっている。
小説問題で、違う場面や時間軸の出来事を、同じ状況に混在させてしまうケースもこれです。
極端(程度・範囲が明らかにおかしい)
(g)誇大化(広すぎる・多すぎる)
♠ある範囲で通用するものを、他のすべてにも当てはまるように書いている。
「過度な一般化」と言ったりもします。
「すべて」「必ず」「常に」などがついているものには注意しましょう。
(h)矮小化(狭い・少ない)
♠いくつかのものに当てはまるものを、「狭い範囲」「少ない量」に限定しすぎている。
本文中で並列関係で列挙されているもののうち、一つにしか言及していない場合もこれにあたります。
たとえば、「よしおは陸上と野球とサッカーが好きだ」と言っているのに、「よしおは球技が好きだ」とまとめてしまうようなケースです。
このようにまとめてしまうと、「陸上」が仲間外れになってしまいますね。
捏造(明らかにその話題がない) *それだけで✕にはできない
(ⅰ)評価(価値判断)の付け足し
♠本文中にない「プラス/マイナス」評価をつけ足してしまっている。
☘たとえば、本文中では「Aはαであり、Bはβである」としか言っていないのに、「AはBよりも優れている」というように、評価を付け加えてしまっているケースなど。
(j)存在しない話題の付け足し
♠本文中にない「話題そのもの」をつけ足してしまっている。
ただし、「話題がない」という×のつけかたには気を付けましょう。理由は次のとおりです。
(1)「言い換え」を見逃している可能性があるから。
(2)その選択肢が「推論」によって成り立っている可能性があるから。
特に(2)の場合、「話題がない」と思える要素がある選択肢が「正解」のときがあります。本文全体(筆者の主張)から考えて「もっともらしさ」がある場合、「本文で言及されていないこと」が書かれていても「×」にはしきれないのです。
したがって、ある「選択肢」を「話題がない」という観点のみで×にする場合、それは次の(1)(2)くらい「明らかに」違う話をしているときに限ります。
(1)「書かれている話題」が「筆者の主張」と整合しない。
(2)「あまりにも筋違いの話」をしている。
(1)については、「(a)主張の逆」という観点でも「✕」にできます。
(2)については、「(c)主題(議題)が違う」という観点でも「✕」にできます。たとえば本文で「仏教」についての話をしているのに、いきなり「キリスト教では」などと言ってくるパターンです。ここまで「明らかに」筋違いの話を持ち込んでいるのであれば、「×」にできます。
したがって、「本文に書かれていない思える表現」があるとしても「それだけで✕」と考えるのは避けましょう。△くらいにしておくのが無難です。
その表現が、「主張と矛盾」していたり、「明らかに筋違い」であったりする場合には、「逆」「主題(議題)が違う」などの観点で✕にしていきましょう。