大前提
答案をつくる際の姿勢として、次のことを意識しておきます。
(1)答案は、本文を読んでいない人に説明するつもりで〈論点収集〉する。
(2)筆者になったつもりで〈簡潔化〉する。

傍線部があれば、その傍線部「以外」から「解答根拠」を拾ってくることがまずは大切です。
答案の仕上げについては、本文に存在しない表現を用いることがあります。その際には、読者的な深読みを避けて(つまり筆者の考えによりそって)、論旨を外さないように表現しましょう。
最も重要なのは「主語S」ー「述語P」
一文(以上)で構成する答案は、「主語Sー述語P」の関係を最重要視します。
つまり、「何がーどうなる」「何がーどうする」「何がーどうである」という関係が表現されていることが大切です。

「主語」は多くの場合、「体言が」「体言は」というように、格助詞「が」または副助詞「は」によって示します。
なお、主語はそもそも格助詞を必須としないので、「体言こそ」「体言も」「体言さえ」といった表現が主語になることもあります。
なお、日本語で「主語ー述語」となるものは、次の4パターンです。
(1)体言は(が) ー 動詞
(2)体言は(が) ー 形容詞
(3)体言は(が) ー 形容動詞
(4)体言は(が) ー 体言+だ/である
「どういうことか」
「どういうことか」という設問に対する基本姿勢は、傍線部の論理関係そのものを「未読の第三者(本文を読んでいない人)」に伝わりやすく言いなおすことです。

些末なことにこだわりすぎるよりも、「主語 ー 述語」の関係を再現することに注力しましょう。
「要はどういうことか」を考えることが最も重要です。
手法としては、傍線部内の「説明が必要な箇所」について、本文別箇所を根拠として「言い換える」、または本文別箇所を根拠として「補足する」ことが基本になります。
「説明が必要な箇所」の典型は、「指示語」「比喩的表現」「意味広範な語(多義的な語)」です。
(ⅰ)「指示語」は「指示内容」を過不足なく書く。
「指示語そのもの」は答案から除外する。
(ⅱ)「比喩的表現」は「実態」をつきとめてそちらを書く。
この場合「比喩そのもの」は答案から除外する。
(ⅲ)「意味広範な語(多義的な語)」は、文脈に即して意味を規定(限定)する。
「語そのもの」が「普通名詞」などであれば、答案に残す。
たとえば「人」であれば、「現代人」「日本人」などに規定すべきか考える。
「なぜか」
「なぜか」は、(傍線部があればその傍線部内の)「結論(主に述語)」の「前」に流れる理屈を答えます。
したがって、多くの場合「述語」に対応する「主語」は「重要要素」になり、その一方、「傍線部における述語そのもの」は答案に必要とされません。
なお、答案化する際に、必要な構成要素に「指示語」や「比喩的表現」といった意味不明瞭な表現がある場合、「どういうことか」の方法論にならい、表現を修正する必要があります。

このあと「3種類」の「なぜか」の話をするのですが、込み入った文になってくると、次の(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)の何が問われているかわからなくなることがあります。あるいは、それらが複合的に問われていることもあります。
強調しておくこととしては、(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)のどれであっても「主語S」は答案に書くことが基本であり、「述語P」は書かないケースが多いということです。その理由は後述します。
3つの「なぜか」 cause/effect/warrant
細かい話に入ります。「なぜか」は「理由」が問われている問題ですが、ひとくちに「理由」と言っても、大きくみて次の3つの方向性があります。
(ⅰ)原因(cause)・きっかけ
「ある結果」に対しての「先行条件」を答える。
小説であれば「きっかけ」や「思い」が先行条件にあたる。
(ⅱ)影響(effect)・効果・目的・意図・動機
傍線部の成立によって次に達成・期待される影響・効果を答える。
人が主語であれば「意図・動機」を答える。
(ⅲ)論拠(warrant)・判断材料
筆者(表現主体)がそのように「判断」した根拠を答える。
「あるものA」と「あるものB」の「類似性」を答える場合が多い。
逆に「相違性」を答える場合もある。
→「AはBである」といえるのはなぜか、であれば「類似性」
「AとBは違う」といえるのはなぜか、であれば「相違性」
(ⅰ)原因(きっかけ)
(ⅰ)は、「ある結果(現象・状態)」に対して、現象として「前」にある「先行条件(前提)」を答えます。

この場合の「述語P」は、何らかの意図や目的をもった行為ではなく、「成り行きで結果的にそうなる」ものです。
たとえば、「氷が解けると水になる」とか、「森を切り開くと砂漠化が進む」といったものです。
小説であれば、「泣く」「落ち込む」といった「状態的なもの」はこれにあたります。
「原因(きっかけ)」が問われている場合、答案の基礎型は次のようになります。
主語Sは、 ~ から。 ( → 結論になる)
↑ ↑
書くことが基本 ここまでが答案
答案は「結果(結論)の現象の先行条件」を答えることになるので、答案に「結論そのもの」を書き込む必然性はありませんが、それだと「何の話」をしているのかわからなくなってしまうので(主題が不在になるので)、「主語S」は書きこんでおくことが基本です。
特に「主語S」が傍線部自体に明記されていない場合は、必ず書き込みます。
(ⅱ)影響(効果・目的・意図・動機)
(ⅱ)は「傍線部の論理」が成立したとして、「次」に起こる(起こりうる)ことを答えます。多くの場合、傍線部の論理を簡素化すると、「何が(主部Sが)ーどうする(述部Pする)」という関係になります。
つまり、傍線部の「アクション/イベント」が成立することで、どんな「エフェクト」が想定されているのか、ということを答えることになります。

「次に起こる(起こりうる)こと」と書きましたが、これは「成り行きで結果的に起こること」ではなく、傍線部の行動の「前」に「主体者が期待していたこと」になりますから、小説問題では「意図・動機」と考えたほうがわかりやすいですね。
この場合、「次に起こること」が解答の「核心」であり、「傍線部そのもの」が条件的な「前提」になりますので、「事実としての前後関係」は次のようなものになります。
SがーOをーPすることで、 ~ から。
SがーOをーPすることによって、 ~ から。
SがーOをーPすれば、 ~ から。
SがーOをーPならば、 ~ から。
SがーOをーPすることが、 ~ から。
↑ ↑
傍線部のSーOーP 影響e(効果・目的・意図・動機)
【アクション・イベント】 【解答の核心】

傍線部が単純な「S-P」であることももちろんありますが、この(ⅱ型)の場合には、「何がー何を(何に)ーどうする」という「S-OーP」になることが多いと言えます。
このように、「影響e」を答える「理由問題」の場合、「傍線部そのもの」を前提(先行条件)として、そのうえで「次に起こる(起こりうる)ことを書く」ことになります。
したがって、答案の字数に余裕がある場合には、「傍線部のSOP」+「次に起こる(起こりうる)こと」のすべてを書き込んでよいことになります。
ただし、「解答の核心」は「次にくること」なので、「傍線部のSOP」は、状況次第で圧縮したりカットしたりすることになります。
その際、一般的に答案に入れないのは「述語P」です。「述語P」は「問われていることの対象」なので(そもそも「その行為」に対してなぜかと問われているので)、答案で繰り返す必要はないと考え、省略することが多くなります。
反対に「主語S」については、ないと「主題」がわからなくなってしまうので、書き込むことが基本です。状況によっては「目的語O」が「主題」になっていることもあるので、これもカットしないほうがいいです。
また、字数に余裕がありすべて書き込める場合であっても、傍線部内に意味が伝わりにくい表現があれば、答案にふさわしい表現に修正します。

傍線部内の「主語S」「目的語O」については、圧縮しながらわかりやすく修正していくイメージです。
(ⅲ)論拠(判断材料)
傍線部の論理を簡素化した際、「何は(主部Sは)ーどうである(述部Pである)」という関係になる場合、「論拠w」を問うているケースが多いといえます。たとえば次のようなものです。
彼は ≒ 大納言だ。(述語Pが主語Sに対する何らかの名称・たとえになっている)
彼は ー 誠実だ。 (述語Pが主語Sの状態や性質になっている)

こういう場合の「主語」は、「行為主」ではないので、「主題主語」と呼ぶことがあります。
ちなみに、シンプルに「なぜか」と問われる場合には、「ⅰ:原因c型」「ⅱ:影響e型」「ⅲ:論拠w型」すべての可能性がありますが、「いえるのはなぜか」となっている場合には、「ⅲ:論拠w」の「なぜか」だと判断します。
「いえるのはなぜか」と問われている際の「主語」は、原則的に「主題主語」であるからです。
〈傍線部の例〉
言語は ー 記号である。
↑ ↑
主語S 述語P(主語Sに対する何らかの名称)
〈答案の例〉
言語は、 ー 物体や現象の代替として機能するから。 (記号であるといえる)
↑ ↑ ↑
主語S 論拠w 答案には不要
ここでの「論拠w」は、「主語S」の意味内容を説明しているとも言えますし、「述語P」の意味内容を説明しているとも言えます。
「物体や現象の代替として機能する」という「内容」が、「言語」についても「記号」についても当てはまるからこそ、この「論拠w」を介して、「言語はー記号である」と言えるわけです。
ということは、この構造は、丁寧に書けば「三段論法」であるといえます。
言語は、物体や現象の代替として機能する。
物体や現象の代替として機能するものは、記号である。
よって、言語は ー 記号である。
もう一例見てみましょう。
〈傍線部の例〉
戸締りは ー 完璧だ。
↑ ↑
主語S 述語P(主語Sの状態や性質)
〈答案の例〉
戸締りは、 ー すべての窓とドアを施錠したから。 (完璧であるといえる)
↑ ↑ ↑
主語S 論拠w 答案には不要
この例でも、「論拠w」は、「主語S」の意味内容を説明しているとも言えますし、「述語P」の意味内容を説明しているとも言えます。
そういったことから、この「論拠w」型の問題は、「類似性を説明する問題」ということもできます。
この逆のケースになりますが、「AはBとは違う」という傍線部について、「そのようにいえるのはなぜか」と問われた場合、「A」と「B」の「相違点」を明確にする必要があります。

「論拠w」型の問題は、「2つのもの」の「類似性」を説明することが基本姿勢なのですが、逆に「相違性」を説明させる場合もあるということですね。
【発展】 複合型 *とくに小説の場合
「なぜか」の基本型として、「(ⅰ)cause/(ⅱ)effect/(ⅲ)warrant」について見てきましたが、難しい問題になると、これらが複合的に問われることがあります。特に小説問題の際は、(ⅰ)+(ⅱ)あるいは(ⅰ)+(ⅲ)などがしばしば見られます。
(ⅰ)+(ⅱ)
「原因c」+「影響e」のパターンです。
小説における登場人物の行動理由には、たとえば、
トムは ー 優勝したことが ー うれしくて ー 飛び上がった。
原因c 心情f ー 行動a
【自然な先行条件】
ボブは ー みかんをもぎとるために ー 飛び上がった。
心情f 行動a
【影響e】
といった「流れ」があります。

同じ「飛び上がった」という「行為」であっても、「成り行きの結果」である場合と、「意図的行為」である場合がありますね。
状況によっては、「悲しいからー泣く」「泣くことによってー許してもらおうと思った」というように、「同じ行為」が「現象的行為ともいえるし、意図的行為ともいえる」というケースもあります。
これについては傍線部の前後を読解し、「どちらか書いてあるほう」を答えるしかありません。どちらも書いてあるのであれば、どちらも書き込むようにしましょう。
たとえば、「よしおはストーブを手に入れたかった」のは「なぜか」とあり、「原因cからもたらされた自然な前提」も、「行動aをすることによって意図されている影響・効果」も記載されているのであれば、両方書いておくほうがよいです。
暖房器具がなく、寒い思いをしていた よしおは、ストーブで部屋をあたためたかったから。
↑ ↑ ↑ ↑
原因c 心情f 主語S 心情f
自然な先行条件 意図・動機
答案を作成する際、傍線部そのものの「SーOーP」については、まず「P」をカットの候補とします。「S」と「O」は、できればコンパクトに書き込みますが、字数次第ではカットの対象です。
したがって、字数が短いのであれば、次のように答えます。
〈簡潔な答案〉
よしおは暖房器具がなく寒い思いをしており、ストーブで部屋をあたためたかったから。
〈さらに簡潔な答案〉
暖房器具がなく寒い思いをしており、部屋をあたためたかったから。

字数が苦しい場合に、「よしお」「ストーブ」「手に入れたかった」をカットしていい理由は、「傍線部内」または「設問文」にそれらの語が「存在する」からです。
「傍線部内」または「設問文」に「存在する」語については、「設問 → 答案」の応答関係において、「問う側」が「すでにその情報を持っている」ものとして処理できます。
特に「述語P」については、そもそも「その行為(結論)」に対する「理由(前提)」のほうを答えることが求められているわけですから、「問いとの応答関係」において、「繰り返す必要がないもの」として扱います。
一方、「主語S」「目的語O」については、「前提」のほうに位置するものなので、「理由の説明」としては「あったほうがいいもの」になります。
そのため、たとえば「よしお」「ストーブ」といった語が傍線部の外側にあり、設問文にも書かれていないのであれば、答案から除外することはできません。「問う側」が「よしお」「ストーブ」という「前提の情報」を「持っていない」とみなすからです。
(ⅰ)+(ⅲ)
「原因c」+「論拠w」のパターンです。
たとえば、「今日の海辺は無数のダイヤモンドだ」という傍線部に対し、「このようにいえるのはなぜか」と問われた場合、基本的には、
今日の海辺 は きらきらと輝いているから。
↑ ↑
主語S 論拠w(述語Pの判断材料)
などという答案が想定されます。
ここで、文中に「陽の光が反射して」という「原因c」とみなせる表現があったとします。その場合、そこにも言及したほうがいっそう伝わりやすい答案になります。
〈解答例〉
今日の海辺は、陽の光が反射して、きらきらと輝いているから。
↑ ↑ ↑
主語S 原因c 論拠w
もう一例見ておきましょう。
友達からもらったコスモスが咲いた。この花は(ア)宝物だ。思い出がつまっているのだ。
ここで、「傍線部(ア)とあるが、宝物といえるのはなぜか」と問われたとします。このとき、次のような〈解答例〉が成立します。
〈解答例〉
友達からもらった コスモスの花は、思い出がつまっているものだから。
↑ ↑ ↑
原因c 主語S 論拠w
このように、「論拠・判断材料」型の問題は、「論拠w」を確定することが「最優先課題」であるものの、理由が問われている以上、「原因c」も本文中に認められる場合には、追記しておくほうがよいです。
【発展】 「論拠」型の「どういうことか」
「どういうことか」と問われているときであっても、「S ≒ P(Sの別名・たとえ)」あるいは「SーP(Sの状態・性質)」という傍線部の構造である場合は、「論拠w」の補充が求められている可能性があります。

(1)傍線部の主語が、いわゆる「主題主語」である。
(2)傍線そのものが短く、「補充」が必要である。
という場合、「論拠w」が必要になることが少なくありません。
考え方は「いえるのはなぜか」に近いのですが、「どういうことか」と問われている以上、
主語Sの説明 ー (+ 論拠w )ー 述語Pの説明 ということ。
というように、「主語Sー述語P」をしっかりと説明したあとで、あくまでも「補充」の観点で「論拠w」を追記することになります。
たとえば、さきほどの「宝物だ」という傍線部に対して「どういうことか」と問われるのであれば、次のような〈解答例〉が成立します。
〈解答例〉
(友達にもらった)コスモスの花は、思い出がつまっていて、大切な価値があるということ。
↑ ↑ ↑ ↑
字数次第 主語S 論拠w 述語Pの言い換え
つまり、「いえるのはなぜか」という問い方であれば、「論拠w」までを答えればよく、「どういうことか」という問い方であれば、「述語P」の言い換えまでを答えるとよいということです。
このとき、さらに字数に余裕があるのであれば、「原因c」の「友達からもらった」という情報を入れます。「どういうことか」と問われている以上、「原因c」よりも、「述語Pの言い換え」のほうが重要度が高いので、「原因c」は、あくまでも「字数があるなら入れる」くらいの感覚でかまわないということです。

国立大学の二次試験などは、すべての問題が「どういうことか」になることもありますが、よく見るとそのうちの一つ二つが、「論拠w」型の問題になっている場合があります。
つまり、「いえるのはなぜか」に近い「どういうことか」の問題が、それなりの頻度で出現するということです。