本論(Body) 論拠(説明・例示)

本論は「結論的意見」につながる「論拠」を示すところです。
「論拠」というのは大雑把にいうと「理由」と「具体例」だと考えてください。

でも「理由」は「序論」に書いちゃってもいいんでしょ。その場合は「本論」は「具体例」を書いていけばいいの?

「序論」の最後に「理由」を示していたとしても、その理由についての「説明」を「本論」に置くことが必要です。
目安としては、本論の「半分くらい」は「理由についての説明」で、「半分くらい」が「具体例」になるといいです。

「考え」が半分くらいで「事実」が半分くらいという感じかな。

そういうことになります。
「頭括型」をベースにした「双括型」の構成としては、
① ② ③ ④ ⑤ ⑥
主題 → 結論的意見 → 理由 → 説明 → 具体例 → 結論
という流れになりやすいです。〈タイプA〉
「序論」には根本的には「①主題」があればいいのですが、②または③まで「序論」に書き込んでしまうことが一般的です。
ある程度字数があるのであれば、「序論」で「理由」について端的に軽くふれておいて、「本論」で「理由」についてしっかり説明していくのがいいですね。
ちなみに「尾括型」で書く場合、「具体例」→「説明」→「端的な理由」→「結論」というように、「頭括型」とは「流れ」が逆になることもあります。
したがって、「尾括型」をベースにした「双括型」の場合、全体の流れが
① ② ③ ④ ⑤ ⑥
問題 → 結論的意見 → 具体例 → 説明 → 端的な理由 → 結論
となることがあるということですね。この場合は、本論が例示から始まるということもありえます。〈タイプB〉
ただ、「流れ」としては、「双括型」は「頭括型」をベースにしたほうがスムーズですし、採点する側も〈タイプA〉のほうに慣れていますから、無理に〈タイプB〉で書く必要はありません。
「説明」の種類

でも、「なぜなら~だからだ。」っていう「理由」の直後に、続けて「たとえば、~。」って具体例を書いてしまいたくなるよね。
その間に入る「説明」っていうのは、何を書けばいいの?

大雑把にみて次の3パターンがあります。
(1)深める
(2)比べる
(3)つなげる

(1)の「深める」とは?

(1)「深める」は、「理由で述べたことの」の「くわしい内容」をある程度の具体性をもって説明することです。
たとえば「原子力発電所について考えを述べよ」という問題提起に対して、
〈結論的意見〉将来的には完全になくすべきである。
〈理由〉なぜなら、運用における費用が甚大であるからだ。
と書いたとします。
そのうえで、
燃料の購入や廃棄に費用がかかる。
事故が起きた時の対応に費用がかかる。
というようにしていくと、

それは「例示」ではないの?

ここは「超重要ポイント」なのですが、「例示」は「さらに一段階具体的にする」ものだと考えてください。
(1)「深める」の場合、〈理由〉→〈説明〉→〈例示〉で、「具体性の次元」を切り替えていくといいです。一段階ずつ「範囲を狭めていく」と考えてもいいです。

〈結論的意見〉医療従事者には~が必要である。
〈理由〉~が備わっていると、患者の安心感につながるからである。
〈説明〉医療機関では~
〈例示〉たとえば〇〇大学付属病院では~

いい感じです!
「説明」で「医療機関」の話をして、「例示」で「実際の病院の出来事」を挙げる、という述べ方は、「具体性の次元」が切り替わっているのがわかりますね。

「理由」と「例示」のあいだに入って「橋渡し」するような感じなんだね。

そういう考えでOKです!
(1)「深める」の方法は「例ありき」のものと考えましょう。適切な例示を考えて、「それにどうやってつなげるか」という視点で書くと、(1)は達成しやすいですよ。

(2)の「比べる」とは?

(2)は、2つの立場を比較して、そのどちらかを取ることです。
「他の案と比較し、自説の優位性を示す」とか、「プランのデメリットに言及し、その対策を示す」とか、「自分の見解とは異なる立場」を示したうえで、「自分の案がいいよ」ということを示すことです。
「課題文」があって、それに「反対」する場合なども、「課題文の内容を批判」したうえで、「その反対になる自説を展開する」という作業が必要になりますので、この「比べる」に該当する書き方になります。

(3)の「つなげる」とは?

(3)は、「原因→結果」とか「プラン導入→影響」といった「過去ー現在」または「現在ー未来」などの「因果関係」を書くことです。
「現状」がこうなってしまった「原因」を分析するとか、プランを導入すると「こうなるはずだ」とか、そういったものですね。
「問題解決型」の小論文の場合、この(3)のスタイルをとって、「原因分析」をする書き方が推奨されることが多いです。

(1)(2)(3)のどれかで書けばいいんだね。

本論のパラグラフを「3つ」作れるのであれば、3つとも書いていいんですよ。
そうすると、
序論
本論① 本論② 本論③
結論
という構成になって、「全体で5つのパラグラフ」になります。これを「ファイブ・パラグラフ・エッセイ」と呼んだりします。

ただ、入試の小論文はたいていそこまでの字数はありませんので、設問に応じて(1)(2)(3)のどれかを選ぶことが多いですね。
論点をひとつに絞るのであれば、「説明」のパラグラフと「具体例」のパラグラフを分けてもOKです。
そうすると、「本論:Body」は、
〈a〉理由の説明(1)(2)(3)のどれか
〈b〉例示
という「2つのパラグラフ」で構成することもできます。
ボディーの論点が3つある場合の展開

【序論】
制服のジャージ化を提案する。ジャージのほうが、生徒の健康や、学力向上に貢献するからだ。
【本論】
(1)ジャージは、柔らかい素材で、伸縮性があり、動きやすく、制服よりも速乾性がある。
(2)今までの制服に比べると、式典のときなどにだらしなく見えるかもしれないが、ジャージをしっかり洗って、きちんと着ていれば問題ない。
(3)制服をジャージにすることで、災害があっても俊敏に逃げられる。汗もすぐに乾くので風邪をひきにくくなる。今までは緊張して受けていた講義も、リラックスして受講することができる。
【結論】
このように、ジャージは健康的で、積極的な学習をうながす。したがって、制服をジャージにするべきである。

うまく展開できていますね。
本論(1)で「ジャージの特徴(メリット)」について述べて、
本論(2)で「既存の制服」と対比したうえで、ジャージの優位性を示し、
本論(3)で、「プランが導入されることでこんな変化がある」ということを述べています。
このように、「Body」に3つの論点をおくなら、「深める」⇒「比べる」⇒「つなげる」と展開していくことができますね。
ただ、しつこく繰り返しますが、たいていの入試小論文ではこんなにたくさん書く字数がありません。
たいていの場合は「くわしく書く」か「比較検討する」か「流れを示す」か、どれか1つできれば十分です。
【列挙型】の展開

なお、
ボディーが3つのパラグラフにできる場合でも、必ずしも「深める」「比べる」「つなげる」のような「性格分け」をしなければならないわけではありません。
シンプルに理由が3つあるのであれば、3つ列挙すればいいです。

【序論】
お昼は吉野家の牛丼にしよう。美味しいものが食べたいが、今日はお金もないし、時間もないからだ。
【本論】
(1)吉野家の牛丼は味付けがうまい。
(2)吉野家の牛丼は価格が安い。
(3)吉野家の牛丼は提供がはやい。
【結論】
このように、吉野家はうまくて安くてはやい。したがって、お金もなくて時間もなく、それでも美味しいものが食べたいこんな日は、吉野家の牛丼を食べよう。

見事に【列挙型】の小論文になっているぞ。
それぞれのパラグラフの中身 Topic(説明) ⇒ Support(補足)

でも、「吉野家の牛丼は味付けがうまい。」だけで「1つのパラグラフ」にするのは、字数が足りてない気がするよね。

そうですね。
できれば、「うまい」の補足事項として、「どんなふうに味付けがうまいのか」についても書いておきたいですね。
また、「安い」の補足事項として、「実際にいくらなのか」を書きたいです。
さらに、「はやい」の補足事項として、「何分くらいで提供されるのか」を書いておきたいです。

うまい。甘辛いたれが絶妙だ。
安い。牛丼並盛400円だ。
はやい。平均して1分30秒で着丼する。
っていう感じかな。

イメージしやすくなったぞ!

とてもいいです。
このように、「本論:Body」のパラグラフひとつひとつの中身は、先に「説明」をして、後ろに「補足(例示)」を足すという構造になりやすいです。
この「説明」と「補足」の関係を、「Topic」と「Support」と呼ぶこともあります。
なお、この「補足」の部分は、多くの場合「具体例」になります。そのため、前半と後半のあいだに、「たとえば」とか「実際」などという表現をおいて、「後半はいっそうくわしいですよ」ということがパッと見てわかるようになっているといいですね。
本来であれば、パラグラフの最後にもう一回「トピック」を言い直すのですが、「小論文」の場合、そこまですると字数が足りなくなりますし、同じことを何度も言っている印象が強くなってしまいますので、「本論:Body」の最後に「トピック」を繰り返さなくて大丈夫です。
「本論:Body」のパラグラフのひとつひとつの内部は、
Topic(説明) → Support(補足)
の順で書くことが自然である。
*本来であればパラグラフの最後に「トピック」を言い直すのだが、「小論文」ではそこまでしなくてよい。

「Body」にパラグラフが「3つ」ある場合、3つとも「説明⇒補足」になるということなんだな。

はい。「Body」に「3つのパラグラフ」があるのであれば、その3つとも、前半が「Topic」であり、後半が「Support」となっているのが、「頭括型」をベースとした小論文の基本です。

パラグラフの中身が、
(ⅰ)原子力発電よりも、風力発電のほうが燃料費がかからない。
(ⅱ)実際、A県の原子力発電所の年間の燃料費は〇〇円であるのに対して、B県の風力発電所の燃料費はゼロ円である。
なんていう感じになっているといいんだな。

そんなふうに、後半のほうに、「固有名詞」とか「実際のデータ」とかが出てきやすいですね。
「Body」のパラグラフの「ひとつひとつ」の中身について、「前半」よりも「後半」を、いっそう具体的にすることを意識しておくといいですね。
(ⅰ)病院で働く医療従事者は~
(ⅱ)たとえば、猫山動物病院のタヌキチ医師は~
となっていれば、(ⅰ)よりも(ⅱ)のほうが「いっそう具体的」になっていますよね。

「本論:Body」は「複数のパラグラフに分けていい」ということと、「それぞれのパラグラフは後半でいっそう具体的にする」ということだな。

そういうことになりますね。
念押しになりますが、(1)(2)(3)のどれかひとつに説明方法を絞るのであれば、「説明」と「具体例」でパラグラフを分けてもいいです。そうすると結果的に「小論文全体の段落数」は「4つの段落」になります。
そして、たいていの小論文は、そんなに字数がありませんので、(1)(2)(3)のどれかに絞ることが多い、と考えておきましょう。
少し余裕があるのであれば、(1)+(2)とか、(2)+(3)とか、(1)+(3)とか、「2つ」の説明方法を採用して、「本論」のパラグラフを2つにすることもできます。