(一)「「定着」あるいは「完成」という状態を前にした人間の心理」とはどういうことか、説明せよ。
解答例
人は、表現の不可逆な定着を成立させる際、微差に執着し、逡巡するほど、未成熟で吟味の足りないものを発露せぬよう暗に意識するということ。
ポイント
(a)表現の不可逆な定着を成立させる
(b)微差に執着(逡巡)
(c)未成熟(吟味不足の)もの
(d)発露しないように意識する
(二)「達成を意識した完成度や洗練を求める気持ちの背景に、白という感受性が潜んでいる」とあるが、どういうことか、説明せよ。
解答例
白いものへ表現は訂正不能な行為の固定であるという想像力に影響され、定着に際してこの上なくよいものにしようと推敲する美意識が生まれるということ。
ポイント
(a)白紙への表現
(b)訂正不能(固定される)
(c)想像力
(d)定着の際、推敲する(熟考する・逡巡する)美意識が生まれる
(三)「推敲という意識をいざなう推進力のようなものが、紙を中心としたひとつの文化を作り上げてきた」とはどういうことか、説明せよ。
解答例
白紙への消せない過失の累積を把握し続ける呵責の念が、表現の向上を志す逡巡の美意識を推し進め、未熟さを超克した潔さが感動の根源となる文化を作ったということ。
ポイント
(a)白い紙に消せない過失の累積を把握し続ける呵責の念
(白い紙に取り返しのつかないつたない結末を顕し続ける呵責の念)
(b)表現の向上を志す(完成度の高い表現を目指す)
(c)逡巡する心理(美意識)を推し進める
(d)潔い表現(未熟さを超克した表現)をしようとする文化
(四)「文体を持たないニュートラルな言葉で知の平均値を示し続ける」とはどういうことか、説明せよ。
解答例
不特定多数の眼にふれ、現実とともに変化するネットの情報は、万人が加筆訂正できる言語表現で、皆が共有できる偏りのない総合知を、無限に更新し続けているということ。
ポイント
(a)無数の人々の眼にふれる
(b)変化する現実に応じる
(c)あらゆる人が加筆訂正できる言語表現
(d)偏りのない、皆が共有できる総合知
(e)無限に更新し続ける
(五)「矢を一本だけ持って的に向かう集中に中に白がある」とはどういうことか。本文全体の論旨を踏まえた上で、100字以上120字以内で説明せよ。
解答例
白は、個人の表現の痕跡を残す際の逡巡と覚悟の感受性であり、紙媒体を超え、空間への表現行為にまで影響を与える。その美意識は、二の矢への依存心を退けて射るような、行為の不可逆性を自覚したうえで洗練を極めようとする決意の中に見出されるということ。
ポイント
(a)白とは個人の表現の痕跡を残す際の逡巡と覚悟の感受性
(b)紙媒体を超え、空間への表現行為にまで影響を与える
(c)二の矢への依存心を退けて射る
(d)行為の不可逆性を自覚したうえで洗練を極めようとする決意