傍線部「以外」の情報を持って「いない」人に説明する。
傍線部問題は、「問う側」が「傍線部の情報しか持っていない」と仮想します。たとえば傍線部が「述語」にしか引かれていなければ、「問う側」は「主語の情報」を持っていないと考えます。その場合、答案に主語を書いたほうが「問う側」の理解が広がります。

最近は「傍線部がない問題」も増えていますが、「本文でいう『言葉』とはどのような性質を持つものか」とか、「筆者のいう『作為』の説明として適当なものを選べ」とか、何らかの指示がありますから、「問う側」の注文にしたがって解答根拠を探しましょう。傍線部のある問題に比べると、解答根拠が広範囲に散っている傾向があります。
最も重要なのは「主語S」ー「述語P」
傍線部問題は、「どういうこと」であっても、「なぜか」であっても、「主語Sー述語P」の関係を最重要視します。「主語が傍線部の外にある」「倒置が起きている」「長い修飾句が混在している」など、構造が読み取りにくいことも多いのですが、まずは「主語Sー述語P」の関係でいうとどうなるか、ということを意識しましょう。

以下の説明では「主語S(Subject)」「述語P(Predicate)」といった語が出てきます。連文節になると「主部」「述部」ということもありますが、ここでは「主語」「述語」いう言い方に統一しています。
なお、日本語で「述語(述部)」となるものは、次の4パターンです。
(1)動詞
(2)形容詞
(3)形容動詞
(4)体言+だ(です・である)
主語(主部)を書く
とにかく、まずは「主語Sを書く」ことを心がけましょう。
ただし、「主語S」は原則的に「述語P」との対応関係で決まるものであるため、「これが述語(述部)」と確認してからでないと「主語(主部)」を決定することはできません。
倒置などにより、「主語S」が最後に書かれているケースもありますし、傍線部内に「主語S」が存在しないこともありますので、傍線部内の「述語P」に対する「実際的な主語S」をつかむ姿勢が大切です。
また、「設問」において「主語S」が明示されているなど、「設問との応答関係」において自明である場合には「主語を省略してよい」とされることもありますが、それは「選択肢問題」や「字数があまりにも短い記述問題」に限ります。ある程度の字数で書くことができる記述問題の場合、いかなるときも「主語S」は書き込みます。
どういうことか。
「どういうことか」という設問に対する基本姿勢は、傍線部の論理関係そのものを「未読の第三者(本文を読んでいない人)」に伝わりやすく言いなおすことです。少なくとも傍線部よりはイメージしやすいものにしなければなりません。
手法としては、傍線部内の「説明が必要な箇所」について、本文別箇所を根拠として「言い換える」、または本文別箇所を根拠として「補足する」ことが基本になります。
「説明が必要な箇所」の典型は、「指示語」・「比喩的表現」・「意味広範な語(多義的な語)」です。
(ⅰ)「指示語」は「指示内容」を過不足なく書く。
「指示語そのもの」は答案から除外する。
(ⅱ)「比喩的表現」は「実態」をつきとめてそちらを書く。
この場合「比喩そのもの」は答案から除外する。
(ⅲ)「意味広範な語(多義的な語)」は、文脈に即して意味を規定(限定)する。
「語そのもの」が「普通名詞」などであれば、答案に残す。
たとえば「人」であれば、「現代人」「日本人」などに規定すべきか考える。
なぜか。
大きな方針(項を説明する)
細かい話に入る前に、「大きな方針」についてふれておきます。
次のような文があるとします。
キャサリンが ー スミスに ー トマトを ー あげた。
主語S 目的語O 目的語O 述語P
*「スミスに」は、「補語」とも「間接目的語」とも言いますが、ここでは「間接目的語」と呼ぶ立場をとり、「目的語O」として扱います。
このとき、「主語」と「目的語」は「述語」に対する「前提」になります。「項」と呼ぶこともあります。その観点でいうと、「あげた」は3つの「項」をとる「三項述語」です。
さて、「理由を説明する」というのは、根本的に「述語に因果的につながる情報を付け足して前提(項)を説明する作業」になります。
たとえばですが、前述の文に対して「なぜか」と問われた場合、
キャサリンは、スミスがトマトを食べたがっていることを思い出したから。
と書けば、「なぜキャサリンが?」「なぜスミスに?」「なぜトマトを?」という3つの「なぜ」に対応している解答になります。
このように、多くの場合、「なぜか」に対する答案は「主語/目的語」に「理由とみなせる情報」を付け足したものになります。

このあと「3つ」の「なぜか」の話をするのですが、込み入った文になってくると、次の(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)の何が問われているかわからなくなることがあります。あるいは、それらが複合的に問われていることもあります。
そのときはこの「大きな方針」を思い出し、「述語」に因果的につながるようなかたちで「主語」や「目的語」を説明していくことを心がけましょう。
特に選択肢問題などの場合には、この「大きな方針」だけでも正誤を判定できることが多いです。
3つの「なぜか」
細かい話に入ります。「なぜか」は「理由」が問われている問題ですが、ひとくちに「理由」と言っても、大きくみて次の3つの方向性があります。
(ⅰ)原因(cause)・きっかけ
「なぜその結果になる(なった)のか」についての先行条件を答える。
小説であれば「現象」にいたる「きっかけ/思い」を答える。
(ⅱ)影響(effect)・効果・目的・意図・動機
傍線部の成立によって次に達成・期待される影響・効果を答える。
人が主語であれば「意図・動機」を答える。
小説問題の場合(ⅰ)+(ⅱ)がありうる。
(ⅲ)論拠(warrant)・判断材料
筆者(表現主体)がそのように判断した根拠を答える。
小説問題の場合(ⅰ)+(ⅲ)がありうる。
(ⅰ)原因(きっかけ)
(ⅰ)は、傍線部の「結論(述部P)」に対して、「前」にくる「前提(先行条件)」を答えます。多くの場合、傍線部の論理を簡素化すると、「何が(主部Sが)ーどうなる(述部Pになる)」という関係になります。

この場合の「述語P」は、何らかの意図や目的をもった行為ではなく、「自然の流れで結果的にそうなる」ものです。
たとえば、「氷が解けると水になる」とか、「森を切り開くと砂漠化が進む」といったものです。
「原因(きっかけ)」が問われている場合、答案の基礎型は次のようになります。
主語Sは、 ~ から。 ( → 結論になる)
↑
ここまでが答案
答案は「結論の前まで」を答えることになるので、傍線部の「結論(述部P)」を答案で繰り返す必要はありません。
小説の場合・・・
小説問題の場合、「何がーどうする」と書いてあっても(述語が「行為」であっても)、「原因c」を問うていることがあります。
たとえば、「泣く」「落ち込む」といった「行為」は、「意図的な行為」というよりは、「何かをきっかけにして引き起こされた現象」といえますので、「原因c」を答える問題になりやすいです。

くわしくは後述します(ⅱ)。
(ⅱ)影響(効果・目的・意図・動機)
(ⅱ)は「傍線部の論理」が成立したとして、「次」に起こる(起こりうる)ことを答えます。多くの場合、傍線部の論理は「何が(主部Sが)ーどうする(述部Pする)」という意味内容を持ちます。
つまり、傍線部の「アクション/イベント」が成立することで、どんな「エフェクト」が想定されているのか、ということを答えます。

「次に起こる(起こりうる)こと」と書きましたが、これは「やってみたらたまたま起こること」ではなく、傍線部の行動の「前」に「主体者が期待していたこと」になりますから、小説問題では「意図・動機」と考えたほうがわかりやすいですね。
この場合、「次に起こること」が解答の「核心」であり、「傍線部そのもの」が条件的な「前提」になりますので、「論理の前後関係」は次のようなものになります。
SがーOをーPすることで、 ~ から。
SがーOをーPすることによって、 ~ から。
SがーOをーPすれば、 ~ から。
SがーOをーPならば、 ~ から。
SがーOをーPすることが、 ~ から。
↑ ↑
傍線部のSーOーP 影響e(効果・目的・意図・動機)
【アクション・イベント】 【解答の核心】
*傍線部が単純な「S-P」であることももちろんあるが、この(ⅱ型)の場合には、「何がー何を(何に)ーどうする」という「S-OーP」になることが多い。
このように、「影響e」を答える「理由問題」の場合、「傍線部の論理関係」を前提(先行条件)として、そのうえで「次に起こる(起こりうる)ことを書く」ことになります。
したがって、答案の字数に余裕がある場合には、「傍線部のSOP」+「次に起こる(起こりうる)こと」のすべてを書き込んでよいことになります。
ただし、「解答の核心」は「次にくること」なので、「傍線部のSOP」は、状況次第で圧縮したりカットしたりすることになります。
特に「述語P」については、「問われていることの中心」なので(そもそも「その行為」についてなぜかと問われているので)、「問う側がその情報をすでに持っている」ものとして処理できます。したがって省略することが多くなります。
また、字数に余裕がありすべて書き込める場合であっても、傍線部内に意味が伝わりにくい表現があれば、答案にふさわしい表現に修正します。

表現の修正については、「どういうことか」と同じ手法になります。
発展・応用 (ⅰ)+(ⅱ) *とくに小説の場合
小説における登場人物の行動理由には、
原因c ー 心情f ー 行動a
という「流れ」があります。
「行動a」について「なぜか」と問われた場合、答案には「原因c」と「心情f」を両方書くことになるのですが、このときの「心情f」は、「原因cからもたらされた自然な先行条件」である場合と、「行動aをすることによって意図されている影響・効果」である場合があります。
たとえば「行動a」が「泣いた」であれば、「理由」は「悲しいから」といったものになります。これは「原因cからもたらされた自然な先行条件」であるといえます。
一方、「行動a」が「階段を上がった」であれば、「理由」は「二階に行くため」といったものになります。これは「行動aをすることによって意図されている影響・効果」であるといえます。
このように「行動a」の内容によって、「自然な先行条件」を聞いているのか、「意図・動機」を聞いているのかが分かれてきます。
ところが小説には、「悲しいからー泣く」「泣くことによってー許してもらおうと思った」というように、「現象的行為ともいえるし、意図的行為ともいえる」というケースがあります。
これについては傍線部の前後を読解し、「どちらか書いてあるほう」を答えるしかありません。どちらも書いてあるのであれば、どちらも書き込むようにしましょう。
たとえば、「よしおはストーブを手に入れたかった」のは「なぜか」とあり、「原因cからもたらされた自然な前提」も、「行動aをすることによって意図されている影響・効果」も記載されているのであれば、両方書いておくほうがよいです。
暖房器具がなく、寒い思いをしていた よしおは、ストーブで部屋をあたためたかったから。
↑ ↑ ↑ ↑
原因c 心情f 主語S 心情f
自然な先行条件 意図・動機
答案を作成する際、傍線部そのものの「SーOーP」については、まず「P」をカットの候補とします。「S」と「O」は、できればコンパクトに書き込みますが、字数次第ではカットの対象です。
字数が短いのであれば、
暖房器具がなく寒い思いをしており、部屋をあたためたかったから。
などと答えるということです。

字数が苦しい場合に、「よしお」「ストーブ」「手に入れたかった」をカットしていい理由は、「傍線部内」または「設問文」にそれらの語が「存在する」からです。
「傍線部内」または「設問文」に「存在する」語については、「設問 → 答案」の応答関係において、「問う側」が「すでにその情報を持っている」ものとして処理できます。
特に「述語P」については、そもそも「その行為(結論)」に対する「理由(前提)」のほうを答えることが求められているわけですから、「問いとの応答関係」において、「繰り返す必要がないもの」として扱います。
一方、「主語S」「目的語O」については、「前提」のほうに位置するものなので、「理由の説明」としては「あったほうがいいもの」になります。
そのため、たとえば「よしお」「ストーブ」といった語が傍線部の外側にあり、設問文にも書かれていないのであれば、答案から除外することはできません。「問う側」が「よしお」「ストーブ」という「前提の情報」を「持っていない」とみなすからです。
(ⅲ)論拠(判断材料)
傍線部の論理を簡素化した際、「何は(主部Sは)ーどうである(述部Pである)」という関係になる場合、「論拠w」を問うているケースが多いです。たとえば次のようなものです。
彼は ≒ 大納言だ。(述語Pが主語Sに対する何らかの名称・たとえになっている)
彼は ー 誠実だ。 (述語Pが主語Sの状態や性質になっている)

こういう場合の「主語」は、「行為主」ではないので、「主題主語」と呼ぶことがあります。
ちなみに、シンプルに「なぜか」と問われる場合には、「ⅰ:原因c型」「ⅱ:影響e型」「ⅲ:論拠w型」すべての可能性がありますが、「いえるのはなぜか」となっている場合には、「ⅲ:論拠w」の「なぜか」だと判断します。
「いえるのはなぜか」と問われている際の「主語」は、原則的に「主題主語」であるからです。
〈傍線部の例〉
言語は ー 記号である。
↑ ↑
主語S 述語P(主語Sに対する何らかの名称)
〈答案の例〉
言語は、 ー 物体や現象の代替として機能するから。 (記号であるといえる)
↑ ↑ ↑
主語S 論拠w 答案には不要
ここでの「論拠w」は、「主語S」の意味内容を説明しているとも言えますし、「述語P」の意味内容を説明しているとも言えます。
「物体や現象の代替として機能する」という「内容」が、「言語」についても「記号」についても当てはまるからこそ、この「論拠w」を介して、「言語はー記号である」と言えるわけです。
ということは、この構造は、丁寧に書けば「三段論法」であるといえます。
言語は、物体や現象の代替として機能する。
物体や現象の代替として機能するものは、記号である。
よって、言語は ー 記号である。
もう一例見てみましょう。
〈傍線部の例〉
戸締りは ー 完璧だ。
↑ ↑
主語S 述語P(主語Sの状態や性質)
〈答案の例〉
戸締りは、 ー すべての窓とドアを施錠したから。 (完璧であるといえる)
↑ ↑ ↑
主語S 論拠w 答案には不要
この例でも、「論拠w」は、「主語S」の意味内容を説明しているとも言えますし、「述語P」の意味内容を説明しているとも言えます。
そういったことから、この「論拠w」型の問題を、「意味内容説明」型と呼ぶことがあります。
発展・応用 (ⅰ)+(ⅲ) *とくに小説の場合
この「論拠w」型の問題において、特に小説問題の場合は、「原因c」が混在してくるケースもあります。
たとえば、「今日の海辺は無数のダイヤモンドだ」という傍線部に対し、「このようにいえるのはなぜか」と問われた場合、基本線としては、
今日の海辺 は きらきらと輝いているから。
↑ ↑
主語S 論拠w(述語Pの判断材料)
などという答案が想定されます。
ここで、文中に「陽の光が反射して」という「原因c」とみなせる表現があったとします。その場合、そこにも言及したほうがいっそう伝わりやすい答案になります。
〈解答例〉
今日の海辺は、陽の光が反射して、きらきらと輝いているから。
↑ ↑ ↑
主語S 原因c 論拠w
もう一例見ておきましょう。
友達からもらったコスモスが咲いた。この花は(ア)宝物だ。思い出がつまっているのだ。
ここで、「傍線部(ア)とあるが、宝物といえるのはなぜか」と問われたとします。このとき、次のような〈解答例〉が成立します。
〈解答例〉
友達からもらった コスモスの花は、思い出がつまっているものだから。
↑ ↑ ↑
原因c 主語S 論拠w
このように、「論拠・判断材料」型の問題は、「論拠w」を確定することが「最優先課題」であるものの、理由が問われている以上、「原因c」も本文中に認められる場合には、追記しておくほうがよいです。
「論拠型」は、「どういうことか」と問われることもある。
なお、「どういうことか」と問われているときであっても、「S ≒ P(Sの別名・たとえ)」あるいは「SーP(Sの状態・性質)」という傍線部の構造である場合は、「論拠w」の補充が求められている可能性があります。

(1)傍線部の主語が、いわゆる「主題主語」である。
(2)傍線そのものが短く、「補充」が必要である。
という場合、「論拠w」が必要になると考えましょう。
考え方は「いえるのはなぜか」に近いのですが、「どういうことか」と問われている以上、
主語Sの説明 ー (+ 論拠w )ー 述語Pの説明 ということ。
というように、「主語Sー述語P」をしっかりと説明したあとで、あくまでも「補充」の観点で「論拠w」を追記することになります。
たとえば、さきほどの「宝物だ」という傍線部に対して「どういうことか」と問われるのであれば、次のような〈解答例〉が成立します。
〈解答例〉
(友達にもらった)コスモスの花は、思い出がつまっていて、大切な価値があるということ。
↑ ↑ ↑ ↑
字数次第 主語S 論拠w 述語Pの言い換え
つまり、「いえるのはなぜか」という問い方であれば、「論拠w」までを答えればよく、「どういうことか」という問い方であれば、「述語P」の言い換えまでを答えるとよいということです。
このとき、さらに字数に余裕があるのであれば、「原因c」の「友達からもらった」という情報を入れます。「どういうことか」と問われている以上、「原因c」よりも、「述語Pの言い換え」のほうが重要度が高いので、「原因c」は、あくまでも「字数があるなら入れる」くらいの感覚でかまわないということです。

国立大学の二次試験などは、すべての問題が「どういうことか」になることもありますが、よく見るとそのうちの一つ二つが、「論拠w」型の問題になっている場合があります。
つまり、「いえるのはなぜか」に近い「どういうことか」の問題が、それなりの頻度で出現するということです。