大前提
答案をつくる際の姿勢として、次のことを意識しておきます。
答案は、設問と傍線部「以外」を読んでいない人に対して、筆者になったつもりでまとめる。
(設問と傍線部は「共有している」という前提で答案作成する)

傍線部があれば、その傍線部「以外」から「解答根拠」を拾ってくることがまずは大切です。
答案の仕上げについては、本文に存在しない表現を用いることもありますが、「本文のここを根拠とした」と言えるものになっている必要があります。
最も重要なのは「主語(目的語) ー 述語」
一文で構成する答案は、「主語 ー 述語」の関係を最重要視します。

連文節の場合は「主部」「述部」と呼ぶことも多いのですが、ここでは「主語」「述語」と表現しています。
主に次の関係を答案に再構築します。
何が ー どうである
何が ー どうなる
何が ー どうする
何が ー 何を ー どうする
*「何を」などの「客語」がある場合、「何が」と同等に重要視する。

「客語」というのは、「客体」を示すものです。「目的語」や「補語」と呼ばれることが多いです。
基本的には「~を」に相当する分節(また連文節)は「目的語」だと考えましょう。
また、「~に行く」などの「に」、「~とする」などの「と」、「~より受け取る」などの「より」などは「補語」と呼ぶことも多いのですが、これも「目的語」と考えてさしつかえありません。
これらの「目的語」は、論理的には「述語」に対する「必須の前提」となり、「主語」と同等の重要度を持ちます。
どうして重要なのかというと、日本語は「能動態」と「受動態」が容易に入れ替わるので、「客体」のほうを「主体」として書きかえることも容易だからです。
ということは「客体(目的語・補語)」としての「情報」は、「主体(主語)」と同等の重要度があると考えなければなりません。

ああ~。
たしかに、
「トムは ヨハンソンを 殴った」なら、
「ヨハンソンは トムに 殴られた」と言えるし、
「レオンは ポートマンに 言いつけた」なら、
「ポートマンは レオンに 言いつけられた」と言えるね。

客語(目的語・補語)は大事だと思っておきましょう。
設問になっている箇所では、「主語」が見えなくなっている、あるいは「主語」があいまいになっていることがけっこうありますので、その際は「主語」を適切に書きましょう。
(1)主語が傍線部の外側に出ている。
(2)主語が傍線部内に書かれてはいるが、適切に規定されていない。
→「何の話か」がぼんやりしている。

たとえば日本人と西洋人を比較している文章で、傍線部の主語に「人」とある場合、その「人」が「日本人」か「西洋人」のどちらかに規定できるのであれば、答案は「日本人は」「西洋人は」などと適切に示しましょう。
「ここで何の話をしているのか」を明確にするということです。
「どういうことか」
「どういうことか」という設問に対する基本姿勢は、傍線部そのものの「わかりにくい部分」を「未読の第三者(本文を読んでいない人)」に伝わりやすく言いなおすことです。

「わかりにくい部分」というのは、多くの場合、
「指示語」
「比喩的な表現」
「多義的(意味広範)な表現」
になります。
(ⅰ)「指示語」は「指示内容」を過不足なく書く。
「指示語そのもの」は答案から除外する。
(ⅱ)「比喩的表現」は「実態」をつきとめてそちらを書く。
この場合「比喩そのもの」は答案から除外する。
(ⅲ)「多義的(意味広範)な表現」は、その文脈における意味に規定する。
もとが客観的な表現であれば除外する必要はない。補足によって説明を果たす。
「なぜか」「いえるのはなぜか」
「なぜか」は、傍線部内の「結論(主に述語)」の「前提」を説明します。
したがって、多くの場合「述語」に対応する「主語」は「重要要素」になり、その一方、「傍線部における述語そのもの」は答案に必要とされません。
なお、答案化する際に、必要な構成要素に「指示語」や「比喩的表現」といった意味不明瞭な表現がある場合、「どういうことか」の方法論にならい、表現を修正する必要があります。

このあと「3種類」の「なぜか」の話をするのですが、込み入った文になってくると、次の(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)が複合的に問われていることもあります。
強調しておくこととしては、(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)のどれであっても「主語」は答案に書くことが基本であり、「述語」は書かないケースが多いということです。その理由は後述します。
3つの「なぜか」
細かい話に入ります。「なぜか」は「理由」が問われている問題ですが、ひとくちに「理由」と言っても、大きくみて次の3つがあります。
(ⅰ)原因・きっかけ( cause 型)
「ある結果」に対しての「先行条件」を答える。
小説であれば「きっかけ」や「思い」が先行条件にあたる。
(ⅱ)目的・意図・効果・影響( effect 型)
傍線部の成立によって次に達成・期待される効果・影響を答える。
人が主語であれば「目的・意図」を答える。
(ⅲ)論拠・判断材料( warrant 型)
筆者(表現主体)がそのように「判断」した論拠を答える。
「述語」が、「主語」の「名称・状態・性質」を示している。
「いえるのはなぜか」という問いの形式になりやすい。

単純に「なぜか」と問われている場合は(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)のどれになるのか考える必要がありますが、「いえるのはなぜか」と問われている場合は(ⅲ)で確定して大丈夫です。
(ⅰ)原因・きっかけ
(ⅰ)は、「ある結果(現象)」に対して、事実関係として「前」にある「先行条件(前提)」を答えます。

この場合の「述語P」は、何らかの意図や目的をもった行為ではなく、「成り行きで結果的にそうなる」ものです。
たとえば、「氷が解けると水になる」とか、「森を切り開くと砂漠化が進む」といったものです。
「原因・きっかけ」が問われている場合、答案の基礎構文は次のようになります。
主語(主部)は、 ~ から。 ( → 結論になる)
↑ ↑
書くことが基本 ここまでが答案
答案は「結果(結論)の現象の先行条件」を答えることになるので、答案に「結論そのもの」を書き込む必然性はありません。一方、「主語」がないと「何の話」をしているのかわからなくなってしまうので、「主語」は書きこんでおくことが基本です。
特に「主語(主部)」が傍線部自体に明記されていない場合は、必ず書き込みます。

ただし、「このときよしおが叫んだのはなぜか」というように、設問において主語が規定されている場合には、答案に主語を登場させなくても大丈夫です。
「設問」は、「出題者」と「解答者」が「お互いわかっているもの」だからです。
(ⅱ)目的・意図・効果・影響
(ⅱ)は「傍線部の論理」が成立するとして、「次」に起こる(起こりうる)ことを答えます。
言いかえると、傍線部の「アクション/イベント」が成立することで、どんな「エフェクト」が想定されているのか、ということを答えることになります。

「次に起こる(起こりうる)こと」は、「成り行きで結果的に起こること」ではなく、傍線部の行動の「前」に「主体者が予測・期待していたこと」になりますから、小説問題では「目的・意図」と考えたほうがわかりやすいですね。
この場合、「次に起こること」が解答の「核心」であり、「傍線部そのもの」が条件的な「前提」になります。
つまり、「意図型」の「なぜか」は、現象の流れとしては、「傍線部そのものの成立」を前提(先行条件)として、そのうえで「次に起こる(起こりうる)ことを書く」ことになります。
したがって、答案の字数に余裕がある場合には、「傍線部そのもの」+「次に起こる(起こりうる)こと」のすべてを書き込んでよいことになります。
ただし、「解答の核心」は「次にくること」なので、「傍線部そのもの」は、状況次第で圧縮したりカットしたりすることになります。
「傍線部」はすでに「出題者」と「解答者」のあいだで共有されているので、「応答的」にはいちいち繰り返さなくてもよいものですが、「論理的」にはあったほうがよいものです。
さらにその「傍線部」は、多くの場合、「主語」が省略されていたり、「比喩的な表現」であったり、「指示語」が含まれていたり、そもそもわかりにくいものになっています。
したがって、「意図型」の「なぜか」は、
傍線部そのものの説明 + 傍線部が成立すれば起こること から。
① ②
* ②は必須/①はあるほうがよい
というイメージで答案を構築します。

傍線部そのものの説明の仕方については、「どういうことか」と同じ考え方になります。
(ⅲ)論拠(判断材料)
傍線部の論理を簡素化した際、次のような構造になっている場合、「論拠w」を問うているケースが多いといえます。たとえば次のようなものです。
彼は ≒ 大納言だ。(述語が主語に対する何らかの名称・たとえになっている)
彼は ー 誠実に働く。 (述語が主語の状態や性質になっている)

こういう場合の「述語」は、「主語」の「中身そのもの」を説明しています。
仮に「述語」の「表現」が「行為」であっても(たとえば「行く」「隠れる」「疑う」など)であっても)、実質上は「主語」の「状態・性質」を意味している場合も少なくありません。
問いの形式がシンプルな「なぜか」である場合は、(ⅰ)(ⅱ)(ⅲ)すべての可能性がありますが、「いえるのはなぜか」と問われている場合は、(ⅲ)の「論拠」型だと判断してOKです。
「論拠」型の例を見てみましょう。
〈傍線部の例〉
言語は ー 記号である。
↑ ↑
主 語 述 語(主語に対する何らかの名称)
〈答案の例〉
言語は、 ー 物体や現象の代替として機能するから。 (記号であるといえる)
↑ ↑ ↑
主 語 論 拠 答案には不要
ここでの「論拠」は、「主語」の意味内容を説明しているとも言えますし、「述語」の意味内容を説明しているとも言えます。
「物体や現象の代替として機能する」という「内容」が、「言語」についても「記号」についても当てはまるからこそ、この「論拠」を介して、「言語はー記号である」と言えるわけです。

ということは、この構造は、丁寧に書けば「三段論法」であるといえます。
言語は、物体や現象の代替として機能する。
物体や現象の代替として機能するものは、記号である。
よって、言語は ー 記号である。
もう一例見てみましょう。
〈傍線部の例〉
戸締りは ー 完璧だ。
↑ ↑
主 語 述 語(主語の状態や性質)
〈答案の例〉
戸締りは、 ー すべての窓とドアを施錠したから。 (完璧であるといえる)
↑ ↑ ↑
主 語 論 拠 答案には不要
この例でも、「論拠」は、「主語」の意味内容を説明しているとも言えますし、「述語」の意味内容を説明しているとも言えます。

そういったことから、この「論拠」型の問題は、多くの場合「主語」の意味内容を「述語」に沿うかたちで説明する問題になります。
ちょっとしたコツがありまして、このタイプの問題は、
主語は、 論拠 という点で、述語である。
という構文に放り込むと考えやすくなります。
このタイプの発展型として、
「AはBではない」といえるのはなぜか
「AはBとは違う」といえるのはなぜか
と問われることがあります。
この場合、「A」が「B」と「逆」であることを説明すればよいことになります。つまり「相違点」を説明するということです。

たとえば、
「入試において、国語は重要ではない」といえるのはなぜか。
という問題があり、本文において、
国語は ー 合否に影響しない
≠
合否に影響するものが ー 重要である
という関係が読解できる場合、答案は、
「国語は合否に影響しないから。」というものになります。
「論拠」型の問題は、「2つのもの」の「類似性」を説明することが基本姿勢なのですが、逆に「相違性」を説明させる場合もあるということですね。
【発展】 「論拠」型の「どういうことか」
「どういうことか」と問われているときであっても、「S ≒ P(Sの別名・たとえ)」あるいは「SーP(Sの状態・性質)」という傍線部の構造である場合は、「論拠・判断材料」の補充が求められている可能性があります。

(1)傍線部の主語が、いわゆる「主題主語」である。
(2)傍線そのものが短く、「補充」が必要である。
という場合、「論拠w」が必要になることがけっこうあります。
考え方は「いえるのはなぜか」に近いのですが、「どういうことか」と問われている以上、
主語の説明 ー (+ 論拠 )ー 述語の説明 ということ。
というように、「主語ー述語」をしっかりと説明したあとで、あくまでも「補充」の観点で「論拠」を追記することになります。

国立大学の二次試験などは、すべての問題が「どういうことか」になることもありますが、よく見るとそのうちの一つ二つが、「論拠」型の問題になっている場合があります。
つまり、「いえるのはなぜか」に近い「どういうことか」の問題が、それなりの頻度で出現するということです。