「イメージ読み」「映像化読み」の真価

文章を読む際、その場面が具体的な映像としてイメージできることが、「理解する」ということの根にあります。

逆を言えば、文章理解において、「具体的な映像が脳裡に浮かぶ」ことがないうちに、「わかった!」と感じることはないということです。

現代文でも、古典でも、文章を読むことを得意としている人は、総じてこの「イメージ読み」ができます。幼いころから得意だった人は、特に意識しなくても、勝手に映像になってしまうとよく言います。

ですから、「文章を読むのが不得意」と感じている場合、まずは意識的に「イメージ読み」をすることを勧めます。「イメージ読み」は、トレーニングでかなりスピードを上げることができます。精度も上げることができます。

さて、「イメージ読み」の大切さを裏付けるものとして、佐藤亮子氏の著書に、面白い取り組みが掲載されていました。お子様が小学校高学年のときに、実際に実施していた方法のようです。

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ある文章問題があるとする。

① その文章を「大人」が読み聞かせをする。

② 子どもはごろごろしながらでいいので、リラックスして聞く

③ 大人が文章を読み終わったら、子どもは「設問」だけを読んで、問題を解く。

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ユニークな点は、「課題文は子どもに見せない」というところです。佐藤氏の意図としては、子どもの中にせっかくできたイメージを壊さないためなのだそうです。

もちろん、学齢が上がれば、課題文も自分で読んでいくことになるのですが、「読む」ということに慣れないうちは、「文章からイメージを構築する」ということのほうをきちんとトレーニングしているのです。幼いうちは、「字」を見るよりも、「音」を聞くほうが、イメージに直結しやすいということなのでしょう。

これは、独特な方法論ですが、小学校の国語教育に携わっている人間なら、「授業でやってみたい」と感じる人が、きっと多いはずだと思います。

佐藤氏の著書のみならず、「映像化」の重要性は、信頼できる多くの本で唱えられています。

文章を読むのが苦手という場合、まずは「イメージ化」「映像化」を試みることをお勧めします。その際、「説明文」よりも「物語文」のほうがイメージをしやすいですから、トレーニングの段階では、「物語」から入るほうがよいと考えられています。