クローン問題と現代の幻想 

  1. 問1 傍線部(a)~(d)のカタカナを漢字で書き、漢字は読みをひらがなで記せ。
  2. 問2 傍線部(ⅰ)~(ⅲ)の意味として最もよいものをそれぞれ次から選べ。
  3. 問3 傍線部(ア)とあるが、その理由についての筆者の見解を二つ探し、それぞれ三十字程度で説明せよ。
  4. 問4 傍線部(イ)における現代人の心性にあてはまらないものを次から二つ選べ。
      1. ア 電車に乗り遅れたら、あきらめて次の電車を待つ。
      2. イ 消しゴムをなくしたら、また文房具屋で購入する。
      3. ウ 友達とけんかをしたら、新しい友達をつくればいいやと思う。
      4. エ ペットが死んでしまったら、生きかえってほしいと願う。
      5. オ 身体の一部を損傷したら、移植による健康回復の可能性も考える。
  5. 問4 次のア~オの文について、本文の内容にあうものには「A」、あわないものには「B」と記せ。
      1. ア クローン太郎は、いくら亡くなった子どもにそっくりだからといっても、本質的にその代わりにはならない。
      2. イ 取り換えがきくという状態に慣れきった現代人は、人間関係まで も、取り換えがきくと思い始めている。
      3. ウ 現代の社会では、古くなった製品を新しい製品に買い替えることでのみ、経済が円滑に成り立つ。
      4. エ クローンの羊とクローン牛は、技術の差異にもかかわらず世間では類型的に扱われている。
      5. オ 人間の記憶を複製するということは、創作物語の題材にはなるが、実際にはありえないことである。
      6. 問6 傍線部(ウ)とあるが、「現代人」が「根本的に衰弱」したのはどうしてか。七十字程度で説明せよ。

問1 傍線部(a)~(d)のカタカナを漢字で書き、漢字は読みをひらがなで記せ。

(a)あんか

(b)噴出

(c)嘘

(d)ちょうこく

問2 傍線部(ⅰ)~(ⅲ)の意味として最もよいものをそれぞれ次から選べ。

(ⅰ) エ 人として守るべき道。 

(ⅱ) イ あてもないことを考えること。

(ⅲ) エ 重大で動かしがたいさま。 

問3 傍線部(ア)とあるが、その理由についての筆者の見解を二つ探し、それぞれ三十字程度で説明せよ。

傍線部内に指示語があるので、指示している部分を確認しましょう。

ところが世間の反応はずいぶん異なっている。羊の場合には、この技術が「神の摂理に反するものだ。」といった宗教的、倫理的次元にまで及んだが、今回の牛の場合には、「安価で優秀な牛を得られる。」といった実用的側面に主に議論が集中している。(ア)同じ技術に対するこの反応の差は、いったい何を意味しているのだろうか。

「クローンをつくる」という同じ技術に対して・・・

「羊」→「神の摂理に反する」という「宗教的・倫理的」次元の議論
「牛」→「安くて良質な牛が生成される」という「実用的」な議論

この反応の差を筆者なりに推測しているところを探しましょう。

ちょっと遠いけど、最後のほうに書いてあるね。


 二十年前の体外受精児誕生以来、代理母、凍結受精卵、精子銀行など、生命の誕生を操作する生殖技術に対して、常識はそのつど「神の摂理に反する。」とのべ続けてきた。しかし、夫婦間の体外受精が今では〈自然な〉技術として受け取られているように、昨年のクローン羊の衝撃は、今日では、もはや自然な技術として人々に受け入れられ、定着しつつあるのだろうか。

 あるいは、常に〈同じ〉牛肉が安定供給されている現代においては、牛は工業製品と同じものとみなされているということなのだろうか。

そうですね!

「あるいは」という接続詞があるので、「A or B」の構図になっています。

つまり、筆者なりに「理由の推察」を「2つ」していることになりますね。

〈解答例〉

①クローンの生成が、自然な技術として人々に受け入れられ、定着しつつあるから。

②同じような牛肉が安定供給されている現代では、牛は工業製品とみなされるから。

それぞれ、もっと字数があるなら、「クローン羊に比べてクローンの牛の場合は、~」というように、「羊」と「牛」の違いであることを明示したほうがいいですね。

今回は字数がないので、「答案の核となる要素」だけで書きました。

問4 傍線部(イ)における現代人の心性にあてはまらないものを次から二つ選べ。

さらにテクノロジーは、臓器移植など、人間の身体を〈同じ〉ものですげ替えるという可能性を開きつつある。そしてこの態勢は、すげ替えが不可能であるはずの対人関係をも侵食しようとしている。現代人の欲望は、〈私〉を中心に、(イ)(他者をも含む)あらゆるものが私のために整備されていることを望むまでに深まったのかもしれない。

「傍線部を含む一文」の出だしに、何も接続詞がありませんね。ということは、「直前の文」は、「傍線部を含む一文」と大きく見れば同内容になります。

つまり、傍線部(イ)の心性というのは、「『私』のためにあらゆるものを取り替え可能にしようとする精神」だと言えます。

選択肢を見比べてみましょう。

ア 電車に乗り遅れたら、あきらめて次の電車を待つ。

「乗り遅れた電車」と「次の電車」は「同じ役割を果たす」とまではいえませんので、「すげかえ」とは言えません。

「あてはまらない」と考えます。 

イ 消しゴムをなくしたら、また文房具屋で購入する。

「自分にとって同じ役割を果たすもの」に「すげかえようとしている」ね。

「あてはまる」だね。

ウ 友達とけんかをしたら、新しい友達をつくればいいやと思う。

「自分にとって同じ役割を果たすもの」に「すげかえようとしている」ね。

「あてはまる」だね。

エ ペットが死んでしまったら、生きかえってほしいと願う。

「唯一のまったく同じ存在」が「生きかえる」ことを願っていることになります。

「あてはまらない」と考えます。

もしもこれが「同じ遺伝子からクローンを生みだそうとする」であれば、「あてはまる」になりますね。

オ 身体の一部を損傷したら、移植による健康回復の可能性も考える。

「自分にとって同じ役割を果たすもの」に「すげかえようとしている」ね。

「あてはまる」だね。

ということは、「ア」と「エ」が正解になります。

問4 次のア~オの文について、本文の内容にあうものには「A」、あわないものには「B」と記せ。

ア クローン太郎は、いくら亡くなった子どもにそっくりだからといっても、本質的にその代わりにはならない。

本文で述べていることに一致するね。

「A」だ。

イ 取り換えがきくという状態に慣れきった現代人は、人間関係まで も、取り換えがきくと思い始めている。

本文で述べていることに一致するね。

「A」だ。

ウ 現代の社会では、古くなった製品を新しい製品に買い替えることでのみ、経済が円滑に成り立つ。

「対価を払えば、古くなった製品は新しいモノに代替可能だし」という記述はありますが、それに続く文脈での「社会経済は、まさに人々があらゆるものを買い替えていくことで成立している」という意味内容において、「古い」ものを「新しい」ものに買い替えることに限定されているわけではありません。

つまり、「社会経済」の論点において、「古い→新しい」という条件はついていないのですね。

ということは、「のみ」と限定できるほどの記述は本文に存在しないといえますので、不適です。

ついでに言うと、「円滑」という説明も本文にはありません。

したがって「B」ですね。

エ クローンの羊とクローン牛は、技術の差異にもかかわらず世間では類型的に扱われている。

本文では「世間の反応はずいぶん異なっている」とあるので、「類型的」は「逆」になります。不適です。

したがって「B」ですね。

オ 人間の記憶を複製するということは、創作物語の題材にはなるが、実際にはありえないことである。

本文で述べていることに一致するね。

「A」だ。

問6 傍線部(ウ)とあるが、「現代人」が「根本的に衰弱」したのはどうしてか。七十字程度で説明せよ。

これは傍線部のある「最終段落」にそのまま答えが書いてあるね。

いずれにしても、現代の欲望は動物にまで、〈同じ〉モノのすげ替え可能性を広げた。すべての存在は、補填可能だという思いの定着。このような流れのなかで、人々は〈喪失〉を受け入れることができなくなってゆく。だが喪失の痛みこそ〈かけがえのなさ〉と表裏一体のものであり、それに耐えられないということは、なにか(ウ)現代人の根本的な衰弱を示しているのかもしれない。

そうですね!

この「現代人が衰弱した」という「現象(結果)」に対して、「先行条件」となる「理由」は、「流れ」として3ポイント発見できますね。

現代の欲望は動物にまで、〈同じ〉モノのすげ替え可能性を広げた。

      ↓

すべての存在は、補填可能だという思いの定着。

      ↓

人々は〈喪失〉を受け入れることができなくなってゆく。


これらをまとめればOKです。

〈下書き〉

現代の欲望は動物にまで〈同じ〉モノのすげ替え可能性を広げ、それにより現代人は、すべての存在は補填可能だという思いを定着させ、喪失の痛みに耐えられなくなったから。

〈同じ〉モノ

は、実際には「同じ」ではないから、比喩的だといえるね。

そうですね。

実際には「同じようなもの」「類型のもの」「同型のもの」であるだけですから、そのように書くほうが適切ですね。

〈解答例〉

現代の欲望は、動物まで同型のもので代替できる可能性を広げ、それにより現代人は、すべての存在は補填可能だと思いこみ、喪失の痛みに耐えられなくなったから。

〈配点〉⑫点

(a)現代の欲望は、動物まで同型のもので代替できる可能性を広げ、 ⑤点
(b)すべての存在は補填可能だと思いこみ  ⑤点
(c)現代人は喪失の痛みに耐えられなくなったから。  ②点

(a)(b)(c)でどうして配点に差があるの?

いいところに気づいてくれました。

ちょっと次の構造を見てください。

現代の欲望は動物にまで、〈同じ〉モノのすげ替え可能性を広げた。

すべての存在は、補填可能だという思いの定着。

このような流れのなかで、人々は〈喪失〉を受け入れることができなくなってゆく。

だが喪失の痛みこそ〈かけがえのなさ〉と表裏一体のものであり、それに耐えられないということは、なにか現代人の根本的な衰弱を示している・・・・・のかもしれない。

「それ」という指示語が指しているのは、「喪失の痛み」ですね。

つなげて読解すると、

喪失の痛みに耐えられないということは、現代人の根本的な衰弱を示している

と述べていることになります。

ああ~。

「喪失の痛みに耐えられない」というのは、「現代人の根本的な衰弱」の「内容説明」みたいなもんなんだな。

そうですね!

「喪失の痛みに耐えられない」というのは、「現代人が衰弱した理由・・」というよりは、「現代人」の「弱さそのもの・・・・」の「内容説明」としての役割が強いのです。

「喪失の痛みに耐えられない」から「衰弱した」

という「前後関係(因果関係)」というよりは、

「現代人は喪失の痛みに耐えられない」≒「現代人は衰弱している」

というイコール関係のようになっているということだね。

そうですね。

A ということは、 B を示している

という書き方をしているので、筆者はそのつもりで書いていると考えましょう。「因果関係」というよりも、「同義関係」として書いています。

この問題は、「衰弱した」のは「どうしてか」という問い方をしていますから、答えるべき「核心」は、「原因・きっかけ」になります。

「原因・きっかけ」の役割としては、

「現代の欲望は、動物にまですげ替え可能性を広げた」
「すべてのものは補填可能だという思いの定着」

という情報のほうが重要度が高いということなんだな。

そうですね!

(a)現代の欲望は動物にまで〈同じ〉モノのすげ替え可能性を広げた。

    ↓(だから)

(b)現代人は、すべての存在は補填可能だという思いこんでしまった。

    ↓(だから)

(c)人々は〈喪失〉を受け入れられなくなった( ≒ 根本的に衰弱していった)

この構図のように、論点(c)は、傍線部の「原因・きっかけ」というよりは、「同じことの言い換え」として機能しています。

そのため「理由を問う問題」の答案としては、(a)(b)に比べると重要度が低くなるのですね。

今日はここまで!