世界がとても狭くなってしまった。

解説です。

問1 傍線部①~④のカタカナを漢字で記せ。

① 未曽有(未曾有)

② 膨大

③ 同士

④ 猶予

問2 空欄【A】に入る表現として最もよいものを次から選べ。

これが、世界が狭くなったということの、二番目の意味である。情報ネットワークの中で、人々はますます狭い世界の中に安住するようになってしまったのだ。八〇年代末、「オタク」ということがよく話題にのぼった。さて現在、多くの人はマニアという意味でのオタクではないけれども、「オタク」的な心性はこの十年あまりの間に、社会にしっかり根を下ろしたようにみえる。すなわち人々は、外の世界「について」の言葉やシンボルを操作するのは巧みだが、自分の世界「の中で」それらを意味づけようとはしない。まるで「【  A  】」のように、知識と身体とを切り離す術を習得してしまったのである。

「ように」は「比況の助動詞」であり、ここでは「直喩法」を導く表現である。

直後にある「知識と身体とを切り離す」という意味内容との対応を考えると、正解は「オ」の「幽体離脱」になる。

他の選択肢の四字熟語も「書けるように、読めるように、意味言えるように」しておこう!

ア 曖昧模糊 あいまいもこ
イ 森羅万象 しんらばんしょう
ウ 当意即妙 とういそくみょう
エ 晴耕雨読 せいこううどく
オ 幽体離脱 ゆうたいりだつ
カ 他山之石 たざんのいし

問3 傍線部(ア)とは、具体的にはどのような状況を意味しているか。説明として最もよいものを次から選べ。

さて、そのようにして膨大な情報にさらされているぼくたちは、これまでよりも世界をオープンに経験しているだろうか? とてもそうは思えない。インターネットによって誰もが直接「世界」にアクセスできているはずなのに、ほとんどの人が仕事以外にやっているのは、仲間うちでメールを交換し、国内のごく限られたウェブサイトを眺め、掲示板でおしゃべりをすることである。情報のネットワークは、それがただ存在するというだけでは、未知の人々どうしの出会いなど生み出さない。むしろ現在のインターネット環境においては、人々は(ア)情報を既製品のカタログのようなものとして経験する。「出会い系サイト」では、人間同士の「出会い」すら、もはや思いがけない出来事ではなくなり、一定の「手続き」に変えられてしまう。

ここでの要点は「既製品」「カタログ」という比喩を解読できるかどうかである。

「既製品」は「注文があってからつくるのではなく、完成品として売る商品」のことである。「レディーメード」ともいう。

「カタログ」は「商品や展示物などの品目を整理して書き並べたもの」であり、「目録」ともいう。

この2つの意味内容をおさえているのは「ア」であり、それが正解である。

選択肢検討

ア 情報が規格品としてたくさん並んでいる。

「既製品」と「規格品」が対応していて、「カタログ」と「たくさん並んでいる」が対応しているね。

イ 情報が部分的でまとまりがない。

「既製品」の意味内容がないし、「部分的でまとまりがない」は、「カタログ」の性質と逆だよね。

ウ 情報が「オタク」的で一般性がない。

「既製品」の意味内容がないし、「オタク」は無関係だ。「カタログ」の意味内容にも言及していないね。

エ 役に立たない情報ばかりが並んでいる。

「既製品」の意味内容がないし、「役に立たない」は傍線部の意味内容とは無関係だ。

問4 次の説明のうち、本文の内容に合わないものを二つ選べ。

「合わないもの」を選ぶ問題。

こういうときに「合うもの」を選んでしまうはやとちりさんがけっこういるので注意しよう。

ア メディアの発達は、グローバリズムの方向とは完全に逆行し、人間が知ることができる世界を狭くしてしまった。

そもそも本文に「グローバリズム」という語句が出てきていないね。

また、一般論として、「メディアの発達」と「グローバリズム」は「逆行」していない。

「一致していない」から「正解」だね。

イ メディアの発達によって、便利さと引き換えに情報の意味をたしかめる余裕がなくなってしまった。

本文で述べられていることと一致している。不正解。

ウ メディアの発達の結果、知識と身体は分裂しがちになり、人は生物的にみて不自然な生活を送っている。

メディアが発達する前の「かつての世界」は「旅」によって世界を経験してきたのであって、本文ではそれを「生き物として自然」と述べている。

したがって、対比的に述べられている「メディア発達後の世界」を「生物的にみて不自然な生活」ということはできる。

つまり、本文と一致しているので、不正解。

エ 人間が、自分の住む場所を離れずに、世界中の情報にふれることができるのは、かつてない状況であるといえる。

本文には「未曽有」という表現もあった。

本文と一致しているので、不正解。

オ 昨今の情報空間は、探しているものがすぐに見つかるため、かつてよりも、当事者にとって真に有益な体験が増えている。

本文の最後に、「単に探しているものしか見つからない退屈な場所」と述べられている。

つまり、筆者は「真に有益な体験」とは考えていないことになる。

本文と一致しないので、これが正解。

問5 傍線部(x)とあるが、「逆説的」といえるのはなぜか。六十字以内で説明せよ。

「いえるのはなぜか」という問題は、「論拠(判断材料)」を問うている設問だ。

「逆説的」というのは、「一見矛盾しているが、よく見ると理に適っている理屈」のことなので、答案には「一見矛盾している二項目」に言及する必要がある。

かつては、わずかな情報を手にいれるために、図書館に通って片っ端から資料を調べたり、注文した外国雑誌を何カ月も待ったりしなければならなかった。それはたしかに、とても不便なことであった。けれどその「不便さ」がある意味では、情報の意味をゆっくり考える猶予を与えてくれていたとも言える。また、ある種の情報が手に入りにくいことは、それを獲得し自分のものにしようとする強い動機づけになってもいた。逆説的に聞こえるかもしれないが、そうした「効率の悪さ」が、とても複雑な意味の場を形づくっていたのである。長い時間のかかる作業は人にいろいろなことを考えさせたし、その途中で思いがけないものが見つかったりした。それに対して、探しているものがすぐに見つかる情報空間とは、裏をかえせば、「単に探しているものしか見つからない」退屈な場所だともいえる。

「逆説的に聞こえるかもしれないが」という表現が係っていくのは、直後の「そうした効率の悪さが、とても複雑な意味の場を形づくっていたのである」というところである。

「効率の悪さ」という〈否定的性格〉を持つものが、「複雑な意味の場」という〈肯定的性格〉を持つものを導くのであるから、「一見矛盾しているが、よく見ると理に適っている理屈」であると言える。

したがって、論理関係としては、

効率の悪さが、逆に(かえって)とても複雑な意味の場を形づくっていたから。

ということになる。

答案には、「逆説的」であることを示すために、「逆に」「かえって」「むしろ」といったような表現を入れておくとよい。

ただし、「効率の悪さ」も「複雑な意味の場」も「傍線部内にある表現そのまま」であるため、「表現点」としては加点が見込めない。

そのため、「効率の悪さ」と「複雑な意味の場」を「いっそうくわしく説明」できるとよい。

「そうした」という「要約的指示語」があるので、「答案に必要な情報が直前に点在している」と考えて、論点を拾っていこう。

直前には、このような意味内容がある。

情報獲得が不便であることが、ゆっくり考える時間をくれた
情報が手に入りにくいことが、情報を獲得して自分のものにしようとする動機づけになった

これらをまとめると、次のような〈答案〉が成立する。

〈答案〉
情報の獲得不便で、手に入りにくいことは、むしろ人に、ゆっくり考える時間や、習得への動機づけを与えてくれたから。

「自分のものにする」というのは、一種の比喩表現なので、「習得(修得)」とか「理解」などのように説明するとGOOD。

「比喩的表現」は、そのままでも減点されるというものではないけれど、その「実態」のほうを書いたほうが説明としては優秀だ。

ところで、これを「40字」で書くとどうなるだろう。

「ゆっくり考える」については、一言にすれば「熟考」「熟慮」などと言える。「自分のものにしようとする動機づけ」については、「学習意欲」などと圧縮することもできる。

すると、次のような〈短い答案〉が成立する。

〈40字以内での答案〉
情報獲得が不便で困難であることが、むしろ熟考の時間や習得意欲を促したから。

以上です!

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