身振りの消失 「問1」「問2」

問1

(ア)挙措   ① 準拠  ② 去就  ③ 特許  ④ 虚実  ⑤ 暴挙

(イ)塊    ① 氷解  ② 奇怪  ③ 皆目  ④ 団塊  ⑤ 懐古

(ウ)更地   ① 晴耕雨読  ② 更迭  ③ 恒久的  ④ 厚遇  ⑤ 強硬

(エ)充満   ① 銃口  ② 柔軟  ③ 追従  ④ 拡充  ⑤ 縦横

(オ)家計簿  ① 原簿  ② 規模  ③ 思慕  ④ 応募  ⑤ 墓碑銘

問2

まず「そういうこと」という指示語があるので、この指示内容を確認していきましょう。

直前にはこう書いてあります。

からだはひとりでにそんなふうに動いてしまう

ここにも「そんなふうに」という指示語があって、つきとめないと何を言っているのかわからないね。

そのとおりですね。

さらに前にさかのぼりましょう。

これはからだで憶えているふるまいである。

ここにも「これは」という指示語があって、つきとめないと何を言っているのかわからないね。

しかも、「これは」が指しているのは、「例示」の中身ですね。

「例示」というのは、「何かを言いたくて出すもの」なので、「例示を出してまで言いたいこと」が重要な論点になります。

その点で、例示の中身を指している

「これはからだで憶えているふるまいである。」

という部分は、とても重要な論点になると考えましょう。

( 例示 ) ← この・これ・その・それ 例示をまとめたような一般的表現

*例示に対し、指示語でその内容を受け、その指示語を転換点として、説明表現(一般的表現)にシフトしていく構文は重要である。

「からだで憶えているふるまい」という論点は、答案に必須ということだな。

そうですね!!

また、傍線部直後に、「ラベルなし(逆接や添加といった展開の目印がない)」の文が続き、その文が「~ということだ」と締めくくられていることにも着眼しましょう。

そもそも、論理的展開を示すラベルが存在しないのであれば、基本的には「同じ意味内容の文が続く」ことになります。

さらに、「ということだ」という文は、いわゆる〈のだ文〉と同様に、前文をより詳しく説明している「後置説明文」の可能性が高いといえます。

したがって、次の一文は、傍線部とほぼ同じ意味内容のことを、筆者としてはわかりやすくして述べている文だと判断できます。

からだの動きが、空間との関係で、ということは同じくそこにいる他のひとびととの関係で、ある形に整えられているということだ。

続く、「バリアフリーに作られた空間ではそうはいかない」という話題においても、「バリアフリー空間」に対比されるものとして、「からだが憶えてきた挙措」「空間へのてがかり」「他者とたがいに見られ、聴かれるという関係」といった論点が出てきます。

そのことからも、「からだが家のなかにある」ことの説明としては、以下の論点をまとめればよいことになります。

a. からだが憶えているふるまい  
b. ひとりでに動いてしまう
c. 空間との関係
d. 他者との関係
e. ある形に整えられる

したがって、記述想定答案は次にようになります。

〈記述想定答案〉
人のからだは、家という空間との関係、またそこに存在する他者との関係において、憶えてきたふるまいを自然としてしまうように規定されているということ。

〈採点基準〉⑧点
からだは(人のからだは)  (ないと減点)
(家という)空間との関係    ①
そこにいる他者との関係     ①
憶えてきたふるまい       ②
ひとりでに動いてしまう     ②
(自然としてしまう)
規定される・決定される     ①
*「形に整えられる」の言い換えとして認められればOK

最も近い選択肢は⑤です。

〈選択肢⑤〉
ただ物理的に空間の内部に身体が存在するのではなく、人間の身体が空間やその空間にいるひとびとと互いに関係しながら、みずからの身体の記憶促されることふるまい決定しているということ。

適度に言い換えていますが、〈選択肢⑤〉には、想定した論点がすべて入っています。

理想的な正解です。

「ただ物理的に空間の内部に身体が存在するのではなく」という「対比項目」は、直後の〈⑤段落〉で述べられている「バリアフリー空間」での身体性のことですね。

記述問題であれば、この「対比項目」を入れる必要はありませんが、選択肢ではこういう「字数稼ぎ」がけっこう発生します。

ただ、京都大学や筑波大学の記述問題のように、「解答欄」が大きくてスペースが余ってしまうときなどは、「対比」で補足していく手段は有効です。

不正解の選択肢

① 

「そういうこと」という指示語の内容を拾っていないので、「核心不在」です。(問いに応答しているとは言えません)

また、「身体が侵蝕されている」という表現は、直後〈⑤段落〉での「バリアフリー空間」での身体性について述べられている部分で登場する語句です。

「たちまち」「完全に支配」といった表現が強すぎます。「極端化」されすぎている選択肢であり、「程度のミス」で不正解です。

直後の〈⑤段落〉で述べられている内容なので、傍線部の説明としては「逆」になる内容です。

「ふるまいを自発的に選択できている」という説明が、傍線部前後の説明と矛盾しています。