試験問題における小説読解の基本

基本姿勢からお話していきます。
①深読みしない
深読みしすぎないことが重要です。原則的に「書いてある情報」のみで読解しましょう。
ただし、選択肢問題では、本文中の表現を「言い換えた」選択肢が正解になることが多いと考えます。そのため、選択肢問題の場合、「表現としては書いていなくても、内容としては書いてある」というものを×にすることはできません。

たとえば、本文に「どきどきした」と書いてあり、選択肢では「気分が高揚した」と書いてある場合、「意味内容が同じ」であるので、OKの選択肢になります。

また、選択肢問題の性質上、正解が「すばらしい正解」とは限りません。
選択肢は、あくまでも「相対的によいもの」を選ぶものなので、「90%正しい選択肢」と、「50%正しい選択肢」がある場合、「90%正しい選択肢」が正解になります。
②きっかけ→心情→行為(セリフ)
何らかの「行為(セリフ)」が発生する過程では、「あるきっかけ」と、それに対する「心情」があります。「きっかけ」と「心情」が前提であり、そのうえで「行為・セリフ」という結果が生成されます。
きっかけ → 心情 → 行為・セリフ
一般的な水準の問題の場合、この「3つ」はすべて本文中に書かれています。
ただし、この「流れ」は、登場人物の心的過程の順番であり、「書かれている順番」ではありません。
小説の「行為」の理由となる心情は、その行為の後ろに書かれていることも多いのです。したがって、前だけではなく後ろもきちんと見るようにしましょう。
問1
① 深刻
② 焦燥
③ 甲高
問2
a 正解は「ア」
「あっけらかん」は、「気にせずけろっとしている様子」のことです。
b 正解は「ウ」
「とらえどころ」は、「こういうものだと判断する決め手になる材料や理由」のことです。
問3
傍線部の前はもちろん重要なのですが、人物の心情や行為の理由を問う問題では、「後ろ」にも強い意識を向けましょう。
そんなある日、久しぶりに成田は編集部の私のデスクに顔を出した。相談したいことがあるから、一緒に食事をと言うので、二人で将棋会館を出てとりあえず軽食のとれる近くの喫茶店に入った。
「何だい、相談って」と私はコーヒーを飲みながら言った。
「大崎さんさあ、どう思う?」
「何が?」
「いや、こっちの最近の奨励会の成績知ってる?」
「ああ、ぱっとしないね」
「うん。もう全然勝てないんだ」と言う成田の顔は酒も飲んでないのに赤く染まり、声は何かに押しつぶされたようにか細かった。
「それでね」と言った成田の手がかわいそうなくらいにブルブルと震えていた。
「それでね、大崎さん」と成田は必死に声を形にするようにしてもう一度そう言うと、唇をかみしめ、すがるような目で私を見た。
そして、こう言った。
「こっち、奨励会をやめようと思うんだ」
そう言う成田の頬はげっそりとこけ、体はやせ細っていた。ゲホゲホと時々、いやな咳にむせんでいた。
喫茶店は満席に近いほど混み合っていて、ざわざわとしたざわめきに包まれていた。
「こっちさあ」と成田は怒ったように、私をまっすぐににらみつけて言った。
「こっち、奨励会をやめます」
喫茶店をうめている人々の煙草の煙や笑い声が、とらえどころのない別世界のできごとのように私には思えた。そんなあやふやな空間のなかで、ナイフのように鋭利に研ぎすまされた成田の言葉だけが確実に私の胸に届き、突き刺さった。
「奨励会をやめる?」と私は一字一句を確かめるようにゆっくりと成田に聞いた。
「うん」と成田は言った。
「なぜ?」
「こっち、お父さん死んじゃってさあ、お母さんもひどい病気で、もう将棋を頑張る気が起きないんだ」
傍線部の後ろには、「やめようと思う」という「心情」が書かれています。まずそれが答案の「核」になります。
と同時に、「それでね」「それでね」となかなか言い出せない様子や、「ブルブルと震えていた」「唇をかみしめ、すがるような目」といった状態から、「平常心を失っている」とか「動揺している」となどと説明することも可能です。
では、選択肢を見比べましょう。
選択肢ア
「才能があるかどうか」が×です。成田がやめたいと思っているのは「やる気」の問題です。
「早く聞きたい」も×です。意見を早く聞きたいのであれば早く言えばよいのですから、なかなか本題を話さない態度と不似合いです。
「落ち着きを失っている」はよいのですが、×が2つ入るので不正解です。
選択肢イ 正解
「あきらめる」という表現が「奨励会をやめる」ということに一致するので、OKです。
「それでね」「それでね」となかなか話を切り出せない様子が描かれているので、OKです。
選択肢ウ
「退会せざるを得ない状況」が×です。「退会」を選択しているのは成田本人であり、理由は「やる気」の問題です。
選択肢エ
大きく見れば成田に〈選択肢エ〉のような気持ちはあると考えられますが、「この時点の気持ち」には相応していません。「傍線部アの時点」にぴったりする気持ちとしては、〈選択肢イ〉のほうがよいので、比較のうえで〈エ〉は×です。
問4
「傍線部イを説明したもの」という出題なので、「傍線部イとあるが、それはどういうことか」という問いと同じです。つまり、傍線部の内容をそのまま説明すればよい問題です。
次のことは、記述問題の方法論ですが、選択肢問題の考え方も根本は同じなので、以下の方針のもとに解答を想定し、選択肢を選んでいきましょう。
① 傍線部(を含む一文)内の 指示語 は指示している対象のほうを過不足なく書く。
② 傍線部(を含む一文)内の 比喩的表現 は、たとえられている実態のほうを書く。
③ 傍線部(を含む一文)内の 熟語 は、どういう点でその熟語のように言えるのか、具体的な文脈を書く。
本問の周辺部を読解しましょう。
「こっち、お父さん死んじゃってさあ、お母さんもひどい病気で、もう将棋を頑張る気が起きないんだ」
「でもな、英二。君は自分で好きで将棋を始めたんだろう。そりゃ、お母さんを喜ばしたいとかそういう気持ちはあっただろうけど、でも本当はそうじゃなくて、自分が勝って強くなりたかった、そうだろう?」
「うん」
「お父さんを亡くしてつらいのはわかるけれど、それとこれとは別の話だと思うんだけどなあ」と私は言った。
「でも、こっちもう頑張れないんだ」と成田は静かに言った。
「だから、君がもう頑張れないならそれはそれでしかたないさ。でも、それはお父さんやお母さんのこととは違う話だろう?」
「いや、一緒だ」
「どうして?」
「それは、一緒だ」と成田は強い口調で反発した。
「いや、違う」と私も語気を荒らげていた。
「そんなことはない。一緒のことだっぺさ。大崎さんにこっちの苦しさなんか何もわからないんだ」と成田は顔を赤くして大きな声で叫んだ。
傍線部には「それ」という指示語がありますので、この内容を答案に取り込みましょう。
記述想定答案その1
父の死や母の病と、自分が将棋をがんばれないことは、別のことではなく、同じ話であること。
「同じ話」というのは、文脈上「関係がある」という意味でとれるので、次のように、「因果関係」として書いてしまってもよいですね。
記述想定答案その2
父の死や母の病によって、自分は将棋をがんばれなくなったのであるということ。
では、選択肢を見比べましょう。
選択肢検討
選択肢ア
「存在意義の喪失」が×です。その意味内容(根拠)が本文に存在しません。
また、答案内に、「父の死(や母の病)」という、指示語の指す内容が入っていませんので、「核心不在」の観点でも×です。
選択肢イ
「父母の生き方をも否定」が×です。その意味内容(根拠)が本文に存在しません。
また、答案内に、「父の死(や母の病)」という、指示語の指す内容が入っていませんので、「核心不在」の観点でも×です。
選択肢ウ 正解
正解です。想定答案に最も近い内容です。
選択肢エ
「経済的基盤」が×です。本文で書かれていることは「精神的にがんばれない」ということですから、「経済」は×です。もしも、ここが「精神的基盤」であったなら、正解に近いものでした。
問5
「なぜ」の問題なので、「なぜか」の基本的な手順を示します。
① 傍線部を含む一文の主語ー述語関係を把握する。
② 「なぜ」をその間に入れてみる。述語の前になることが多い。
③ 単純な「なぜか」であれば、結論の直前までの前提を連鎖的につなげることが重要である。(「なぜ」が入るところの「上」にくるべき理由の論点を収集する。)
以上のことは、「記述問題の際の方針の立て方」としておさえておきましょう。
選択肢問題はあくまでも「他がもっとダメなら残ったものが正解」という世界であり、「正解が美しい」とは限りませんので、あくまでも「選択肢同士の比較」で正解をしぼっていきましょう。
では、問題を解きましょう。
「こっち、お父さん死んじゃってさあ、お母さんもひどい病気で、もう将棋を頑張る気が起きないんだ」
「でもな、英二。君は自分で好きで将棋を始めたんだろう。そりゃ、お母さんを喜ばしたいとかそういう気持ちはあっただろうけど、でも本当はそうじゃなくて、自分が勝って強くなりたかった、そうだろう?」
「うん」
「お父さんを亡くしてつらいのはわかるけれど、それとこれとは別の話だと思うんだけどなあ」と私は言った。
「でも、こっちもう頑張れないんだ」と成田は静かに言った。
「だから、君がもう頑張れないならそれはそれでしかたないさ。でも、それはお父さんやお母さんのこととは違う話だろう?」
「いや、一緒だ」
「どうして?」
「それは、一緒だ」と成田は強い口調で反発した。
「いや、違う」と私も語気を荒らげていた。
「そんなことはない。一緒のことだっぺさ。大崎さんにこっちの苦しさなんか何もわからないんだ」と成田は顔を赤くして大きな声で叫んだ。
それは、そうかもしれないと私は口にしなかったが、そう思った。その通り、僕にはたしかに君の苦しさはわからないのかもしれない。では、君には僕の苦しさがわかるというのだろうか。僕が君に持ち続けている、君の才能への羨望や、奨励会で戦う君の立場への憧れを一度でも感じてくれたことがあったのだろうか。奨励会は確かに苦しいかもしれない、だけど君たちは間違いなくそこで戦うことを許された戦士なのだ。戦士は自分のためだけに戦えばいい、そしてその責任をすべて自分自身が背負うべきだし、それを許されるのだ。光り輝く宝石のようなそのことの意味に、君は気がついているのだろうか。
傍線部内に「なぜ」を入れてみましょう。→「いや、違う」と私もなぜ語気を荒らげたのか?
→「なぜ」は「語気を荒らげた」の前に入ります。
→「語気を荒らげた」に連鎖する前提を探せばよいことになります。
一つは、「私」は「父母のことと将棋をやめたいと思うことは別次元の話だ」と思っているからです。もう一つは、「成田が強い口調で反発したから」です。(だから、私「も」となっています)
この2ポイントを答案に取り込みましょう。
しかし、これでけでは足りません。
〈小説の「行為やセリフ」の「理由」は、後ろに書かれることが多い〉の法則を思い出しましょう。
直後には、「私」が成田に抱いている「羨望」や「憧れ」が語られています。つまり、「私」は、成田が「戦うことを許された戦士」であるにもかかわらず、それを放棄しようとしていることがつらいのです。「戦士」などという比喩表現はそのまま書くわけにはいきませんが、「才能」などは使用することができます。

この問題は、「かくれ指示語の問題」であるともいえます。
傍線部そのものに指示語がなくても、傍線部と密接につながる直前の文に指示語があれば、やはりその内容に言及しないわけにはいきません。
ここで、「私」は、
「君(成田)がもう頑張れないこと」と「お父さんやお母さんのこと」とは「違う」
と述べています。
それに対して、「成田」は、
「いや、一緒だ」
と言っています。
「どうして?」と聞く「私」に、「成田」は、
「それは、一緒だ」と強い口調で反発しています。
傍線部の直前にある「いや、違う」というセリフは、明らかにこの「それ」という話題を受けています。
「それ」が指しているのは、
「成田が将棋をやめたいということ」と「成田の父母の状況」が関係している
ということですね。
「成田」は、「関係ある」と言っていて、「私」は「別のことだ」と言っているのです。
「それ」という指示語の位置から考えると、この話題が入っていない選択肢はよいとは言えません。仮に、すべての選択肢に入っていないのであれば仕方ありませんが、4つの選択肢のうち、2つに入っているのであれば、正解はそのどちらかということになります。
正解の選択肢「イ」は、「親のことを理由にして、才能ある者の責務と権利を手放そうとしている」とあります。後半の、「責務と権利を手放そうとしている」というのは、要するに「やめようとしている」ということですから、これが正解になります。
記述想定答案
成田は、家族の不幸によって将棋をやめたくなったと強い口調で言うが、「私」は、それらは別次元のことであり、才能ある成田に将棋を続けてほしいと思っているから。
〈想定答案〉を念頭に置き、選択肢を見比べましょう。
選択肢検討
選択肢ア
「興味を失ってしまった」が×です。本文中にその意味内容(根拠)は存在しません。
「つらいからやめたい」と言っていることと「興味を失ってしまった」ということは、意味が異なります。
選択肢イ 正解
「才能ある者としての責務と権利」というのは、まさに傍線部の「後ろ」に書かれていることです。選択肢独特の「言い換え」をしていますが、内容的には〈イ〉が最もよいです。

ここでの「手放そうとしている」というのは、要するに「やめようとしている」ということですね。
選択肢ウ
大きく見れば本文と整合しているように見えますが、「私」は、「私の苦しさもわかってくれ」と考えているわけではありません。たしかに後ろには、「では君にはわかるというのだろうか」と書かれています。しかし、「わかってくれ」と思っているわけではありません。

「君にもおれの気持ちはわからないだろう」という気持ちは書かれていますが、「わかってくれ」と書かれているわけではないのです。したがって、「ウ」を正解と考えると、「深読み」ということになってしまいます。
ここはあくまでも、「成田」に将棋を続けてほしいからこそ、言い争いになっても「私」は主張を曲げないのです。
「どうせお前にだってこっちの気持ちはわからないだろう!」という気持ちで「語気を荒くした」という因果関係は成り立ちますが、「わかってくれ」と思っているわけではありませんから、「ウ」の選択肢は整合しないことになります。
また、「ウ」の選択肢は、「それ」の意味内容である「親の不幸」について言及していませんので、指示語を処理していないといえます。
それだけで×にまではしにくいのですが、「ア」「イ」の選択肢には「親」というキーワードが書かれていますので、比較すると、「ウ」「エ」の選択肢が正解になる可能性は低いです。
選択肢エ
「筋の通らない」が×です。成田の主張は、成田としては一貫しています。「私」の主張と食い違っているだけであり、筋が通っていないわけではありません。
また、これも「ウ」と同じように、「親」という単語が入っていません。「ア」「イ」と比較すると、未熟な選択肢になっています。
問6
「老人のような」が比喩表現ですから、その比喩がたとえている「実態」のほうを説明すればよいことになります。
傍線部を含む一文を広く見ると、
深い傷を負い、疲れ果てた老人のような奨励会員の姿があった。
とありますから、「深い傷」がなんなのかについても説明があるといっそうよい答案になります。
では、選択肢を見比べましょう。
選択肢検討
選択肢ア 正解
傍線部直前にある「深い傷」は、「実態」としては「家族の不幸に傷ついている」ことです。
また、「老人のような」という比喩は、「夢までも失おうとしている」というネガティブな内容に一致しています。理想的な正解とまではいえませんが、他の選択肢との比較のうえ(他の選択肢が「もっと×」なので)、これが正解です。
選択肢イ
「力の限り戦い抜き」が×です。
「老人のような」という比喩だけで考えると、一見よさそうに見える選択肢ですが、実際の「成田」は、「将棋そのものについて力の限り戦い抜いた」わけではありません。
(「将棋をやりつくした」とは書かれていませんし、「大崎」から見ると「まだまだ戦い抜いていない」と思えるからこそ、やめることに反対しているのです。)
また、この時点で実際に「辞めてしまった」わけではありませんから、「目標を達成できなかった」と過去形になっている点も×です。
選択肢ウ
「母の回復を願うこと」と、「夢をあきらめること」に、因果関係がありません。
成田が奨励会を辞めようとしている理由はあくまでも「気落ち」ですから、この選択肢は「因果関係の捏造」です。
選択肢エ
全体的に本文に書いていません。前半も後半も×です。
問7
小説には、「ストーブ」「月」「海」「歯ブラシ」など、様々な「象徴的小道具」が登場します。作者は、何らかの意味があって、「モノ」や「風景」をそこに書き込むのです。
そのことから、「冷めたコーヒー」にも、何らかの象徴的な意味を持たせていると考えるべきです。
このような問題は、前後の文脈から考えて消去法で行うことになります。おかしいものに積極的に×を入れていき、残ったもの(×とは言い切れないもの)を正解と判断しましょう。
選択肢検討
選択肢ア 正解
時間が経過したからこそコーヒーは冷めるので、×にはできません。
他の選択肢に×がつくのでこれが正解。
選択肢イ
「冷静さの回復」が×です。周辺の話題から「冷静さ」は読み取れません。
もしもこれが正解になるのであれば、この周辺に「私と成田はおだやかな口調で談笑しながらケーキを食べた」などの描写が必要です。そういったものがないので、「読み取れない」と判断し、×にします。
選択肢ウ
「険悪な関係」が×です。前後の状況は、「険悪」というほどのものではありません。
傍線部の直後には、「青年の感情の叫びを、何とか聞き取ってやることができないものか」とあるので、少なくとも「私」は、「成田」に対して愛情をもって接しています。
選択肢エ
「冬の季節感」が×です。コーヒーが冷めるのは「冬」だけではありません。「夏」でも冷めるものは冷めます。
したがって、「冷めたコーヒー」によって「冬」が描写されていると決めつけるのはおかしいです。
問8
「どういうことか」タイプの問題なので、指示語・比喩などに気をつけて解答しましょう。
直前に「それだけが」とあるので、「指示対象」をまとめれば正解に近づきます。
ずいぶんと特殊で危険な場所に立っている弟のような青年の感情の叫びを、何とか聞き取ってやることができないものかと耳を澄ましている~
という部分を取り込んでいる選択肢が正解になります。
選択肢を見比べましょう。
選択肢検討
選択肢ア
「何とか聞き取ってやる」の論点がありません。指示語を解決していないので×です。
選択肢イ 正解
指示対象を適切にまとめている選択肢です。
選択肢ウ
「成田自身が決断するのを待ち続ける」という説明が、「何とか聞き取ってやる」という感情と食い違っています。
選択肢エ
「成田の気が済むまで話を聞く」が説明不足です。「何とか聞き取ってやることができないものか」ということは、成田の叫びを「理解してやりたい」と思っているわけです。
ただ、形式上「聞く」わけではありませんから、〈選択肢エ〉も本文との食い違いがあります。
問9

本文中にはっきりとした根拠がありませんから、「明確な×」を落としていって、結果的に残った選択肢を〇にするしかない問題です
つまり、「消去法でしか正解が出せない問題」です。
「正解の明確な根拠」を必死で探すのではなく、「おかしいところ」をつぶしていきましょう。
選択肢ア 正解
(ⅰ)も(ⅱ)も本文の内容と整合しています。

(ⅰ)の続きには、
「喫茶店を埋めている人々の煙草の煙や笑い声が、とらえどころのない別世界のできごとのように私には思えた」
と書いてあります。
「ナイフのように鋭利に研ぎすまされた成田の言葉だけが確実に私の胸に届き、突き刺さった」
とも書いてありますので、成田の言葉が「私」にとって衝撃であったことがわかります。
この状況を考えると、「言葉を失っている」という説明は、本文に整合していると考えられます。
(ⅱ)の続きには、
「青年の感情の叫びを、なんとか聞き取ってやることができないものかと耳を澄ましている」
と書いてあります。
そのことから、
「周囲のざわめきなどをできるだけシャットアウトして、成田の気持ちを聞き取ることに集中している」
と読解することは可能です。
すると、選択肢「ア」は、(ⅰ)についても(ⅱ)についても、おかしい読解ではないことになりますので、正解候補です。
他の選択肢は「もっと×」なら、結果的に「ア」が正解になります。
選択肢イ
(ⅱ)の「考えることを放棄している」がおかしいです。「感情の叫びを何とか聞き取ってやろう」としているわけですから、考えているはずです。
選択肢ウ
(ⅰ)の「思案している」が、このタイミングとしてはおかしいです。
(ⅰ)の場面は、落ち着いて考えているというよりは、突然の成田の報告に衝撃を受けているところです。
(ⅱ)の「無力さを実感」も読み取れません。「感情の叫びを何とか聞き取ってやろう」としているわけですから、自分を無力とは思っていません。
選択肢エ
(ⅰ)の「成田の言葉をかき消す」が事実と異なります。「騒音が収まるのを待っている」という内容も本文に書かれていません。
(ⅱ)の「衝撃」は、タイミングがおかしいです。「衝撃」を受けているのは(ⅰ)の時点であり、(ⅱ)の時点では事態を受け止めて、「なんとかしてやれないか」と考えている状態になっています。
問10
喫茶店のシーンではなく、「かつて」の成田の人物像を問う設問です。消去法で見ていきましょう。
選択肢ア
「争いごとを極力避けよう」が逆です。
本文内にある「かたくなに自分の考えを曲げない頑固な勝負師」という人物像と矛盾します。
選択肢イ
「したたかさを持った油断ならない人物」という描写が存在しません。
この表現だと「かつての成田」は「あれこれ策を練る人物」という印象になりますが、「かたくなに自分の考えを曲げない頑固な勝負師」という描写とは食い違っています。
選択肢ウ
「傲慢」が言いすぎです。
「傲慢」とは、「おごりたかぶって、人をあなどること」という意味ですが、成田が思い上がって人を見下すシーンはありません。
選択肢エ 正解
「かたくなに自分の考えを曲げない頑固な勝負師」「どこまでも楽観的な明るさ」という描写に最も近い選択肢です。これが正解です。

おつかれさまでした!