現代文の傍線部問には、主に3種類の基礎パターンがあります。ここでいう「基礎」とは「簡単」ということではなく、あらゆる問題の土台といえるものです。
3つに大別できる傍線部
具体的には、傍線部問題の「問い」は、次の3種類に分けられます。
a.~とあるが、それはどういうことか *各論点の置換
b.~とあるが、それはなぜか *原因・きっかけの指摘
c.~とあるが、そのようにいえるのはなぜか *前提の説明と結論の説明
それぞれについて見ていきましょう。
〈a〉どういうことか
「どういうことか」であれば、主に傍線部の各要素を、より具体的に表現している箇所を探し、そちらの表現を解答に取り込むことがファーストステップです。その際、傍線部内の表現が「比喩」であれば、実態のほうを書きこみ、比喩そのものは答案から除外します。傍線部内の「熟語」は、「どういう点でその熟語のように言えるのか」というほうを突き止め、そちらを補充します。熟語そのものは、理想的には言い換えますが、現実策としてはそのまま書き込んでも問題ありません。(詳しくは前記事を参考にしてください)
すべてではありませんが、傾向として、「どういうことか」の問題は、特に〈述語〉を取り替えることが重要になることが多くなります。とはいえ、〈主語〉が傍線部の外部にあっても、答案には取り入れるくせをつけておきましょう。
〈b〉なぜか
「なぜか」であれば、まず、「なぜ」が直接係る箇所を「結論」と位置付けます。多くの場合それは〈述語〉です。
たとえば、次のような文章があるとします。
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雨が降ってきた。
(ア)よしおは濡れてしまった。
~ 傘を持っていなかったのである。
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ここで、「傍線部(ア)とあるが、それがなぜか」と問われた場合、「なぜ」が直接係る箇所は「濡れてしまった」です。
その際、「なぜ」を入れたところの「前」に来るべきものを答案に持ち込むことが重要です。 主語の「よしおは」は、必ず書き込みます。そのうえで、 「雨が降ってきた」と、「傘を持っていなかった」という「前提」を書き込みましょう。
すると、答案は、
雨が降ってきたとき、よしおは、傘を持っていなかったから。
となります。
このように、原因やきっかけを問う「なぜか」の問題は、「なぜか」の直接係る箇所〈主に述語〉を答案に含める必要はありません。書いてあっても減点はされる可能性は低いと言えますが、字数を圧迫するので、他に書くべき論点を落としてしまう危険があります。
また、単純な「なぜか」の問題が、70字、80字といった長い字数を求めてくる場合、「前提」が二つあり、事実上三段論法のようになっている可能性があります。常に「前提」を二つ探すくせをつけておきましょう。
最後に、答案をまとめるにあたって、比喩や例示を解除することは「どういうことか」と同様でありますから、いったん「書くべき論点」を収集したら、あとは「どういうことか」と同じように、わかりにくい表現を変換していく表現努力をしましょう。
〈c〉いえるのはなぜか
「いえるのはなぜか」の問題の場合、「前提に言及しつつ、意味内容を説明する」タイプだと判断します。なお、「いえる」と書かれていなくても、〈主語〉と〈述語〉が同じものを指している場合は、「意味内容を説明する」タイプになる可能性があります。
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意味内容を説明するタイプの「なぜか」の2パターン
① (傍線部)とあるが、そのようにいえるのはなぜか。 (言える系のなぜか)
② 「S(主語)はP(述語)である」とあるが、それはなぜか。(S≒P系のなぜか)
このようなタイプの問題の場合、まず間違いなく、「傍線部を含む一文」に「意味不明瞭な表現」があります(だからこそ、「いえるのはなぜか」という問い方になりやすい)。
その「意味不明瞭な表現」を説明すると、そのまま「答案の核」になる問題も少なくありません。
「なぜか」と問われている以上、多くの場合、何らかの「前提」も付け加えていく必要がありますが、「いえるのはなぜか」と問われている設問は、「①まず傍線部を説明」してしまって、次いで「②前提」を探す、という方法論が有効です。場合によっては、①の作業だけで答案が完成してしまうこともあるからです。
たとえば、次のような文章があるとします。
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みんなからもらったチューリップが咲いた。
この花は僕の(ア)宝物だ。
それは、かけがえのない、大切なものなのだ。
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ここで、「傍線部(ア)とあるが、宝物といえるのはなぜか」と問われた場合、
「僕」にとって、かけがえのない大切なものだから。
というものが本質的な正解になります。
そのうえで、「前提」も入れる努力をすると、
友達からもらった花なので、(前提)
「僕」にとって、かけがえのない大切なものだから。(「宝物」の意味内容説明)
という答案になります。
まとめると、「いえるのはなぜか」というタイプの問題は、「どういうことか」と「なぜか」を合わせたような問題であり、そのぶん、答案に盛り込まなければならない論点が増える傾向にあります。
そのため、「難しい」と感じることが多くなります。しかし、「やらなければならない作業」をあらかじめ定めておけば、制限時間内に「基礎点」を取っていくことはできるのであり、その「基礎点」だけでも合格点を超えることは可能です。