(四)「文体を持たないニュートラルな言葉で知の平均値を示し続ける」とはどういうことか、説明せよ。
基本的な作業で半分以上の得点が取れる問題です。この年の小問の中では最も解きやすいものです。
この問題は、
a.文体を持たない
b.ニュートラルな言葉で
c.知の平均値を
d.示し続ける
という「4ポイント」を、主に同段落内から同義置換していけばよいことになります。
① 主語(主題)の確認
傍線部の主語は「その情報は」であるので、指示語の指示する対象を取り込んだうえで、答案に書き込む必要があります。
無数の人々の眼にふれ、変化する現実に応じていく インターネットの情報は、
という主題が設定できます。
段落全体が「インターネット」の話をしているので、「インターネット」という語も答案には必要です。なお、筆者自身も使用しているので、「ネット」と縮めても問題ありません。
② 傍線部の各要素の置換
a:文体を持たない
これは、意味上「書き手独自の特徴がない」ということであるから、内容的には、「書き手が複数いる」ということになります。すると、「あらゆる人々が加筆訂正できる」という部分があてはまります。
b:ニュートラルな言葉
辞書的には、「どちらにも属さないこと」「中立」「中性」といった意味になります。
〈論点a〉とあわせて書けば、
あらゆる人が加筆訂正できる 中立的な言葉で
などといった説明が可能です。「言葉」は、十分伝わる語であるから、無理して言い換える必要はありませんが、「傍線部の語句はできるだけ言い換える」という〈方法論的一貫性〉に従うならば、「言語」とか「表現」などとしてもよいですね。
c:知の平均値
これは、「情報の内容」において、「あらゆる人々の知性が総合されることによって、結果的に偏りなく表出している」ということです。
たとえば、インターネット上の百科事典において、「読売ジャイアンツ」の項目を「一人」が書けば、「日本プロ野球機構の最も強い球団であり、別名巨人軍である。なお、ジャイアンツに在籍したことのある選手の中で、最も魅力的な選手は上原浩治である」などと、個人的な「思い」が存分に発揮されてしまう可能性があります。
しかし、このインターネット上の百科事典は、それこそ世界の無数の人々の目にさらされているので、「いや、最も魅力的な選手は松井秀喜だ」とか、「そもそも最も強い球団は埼玉西武ライオンズだ!」といった「別の意見」が出てきます。
そういった「個人のつぶやき」がものすごい数で押し寄せてくると、「ジャイアンツに在籍したことのある選手の中で、最も魅力的な選手は上原浩治や松井秀喜や王貞治や長嶋茂雄や吉村禎章や仁志敏久や元木大介や桑田真澄やガリクソンやクロマティや……まあ、みんな魅力的である」といったように、結論に「偏り」がなくなっていきます。その「偏りのない情報内容」が、「知の平均値」ということです。
本文では、「皆が共有できる総合知」という表現が、意味的にあてはまるので、ここを使用できるとよいです。
「平均値」という語を意味的にひらいた表現が存在しないので、辞書的意味を援用し、「偏りがない」などという説明を追加できればよりよいです。
d:示し続けている
「続けている」が重要です。これは、「無限に更新」という箇所がぴったり対応しているので、そのまま使用すればよいです。「無限に更新」は、次段落でも繰り返されているので、そもそも重要視しておきたい論点です。
以上のことをまとめると、次のような答案が成立します。
下書き
無数の人々の眼にふれ、変化する現実に応じたインターネットの情報は、あらゆる人が加筆訂正できる(中立的な)言葉で、皆が共有できる偏りのない総合知を、無限に更新し続けているということ。
長いので圧縮をしましょう。
解答例
不特定多数の眼にふれ、現実とともに変化するネットの情報は、万人が加筆訂正できる言語表現で、皆が共有できる偏りのない総合知を、無限に更新し続けているということ。

この問題は、「白」の中で最も得点しやすいものです。
できるだけ失点したくない問題ですね。