(二)「達成を意識した完成度や洗練を求める気持ちの背景に、白という感受性が潜んでいる」とあるが、どういうことか、説明せよ。

(一)の解答と、同じようなものになってしまった人が多かった問題です。
しかし、(一)については、
「表現の完成や達成を前にすると、本当にこれでいいのかな? と迷ってしまう」
とうことが「答案の核」になります。
今回の(二)については、
「白いものに表現を固定するときは、後戻りできないから、より美しく仕上げようとする」
ということが「答案の核」になります。
答案が部分的に似通ってしまうのですが、「核」が異なることは強く意識しておきましょう。
当然、「核」の部分の配点が最も大きいと考えるべきです。

傍線部前半の「達成を意識した完成度や洗練を求める気持ちの背景」という部分は、はっきり言ってこのままでも通じる表現ですね。
そのことからも、この出題の「核(ポイント)」は、「白という感受性が潜んでいる」という部分の説明になります。
白い紙に記されたものは不可逆である。後戻りが出来ない。今日、押印したりサインしたりという行為が、意思決定の証しとして社会の中を流通している背景には、白い紙の上には訂正不能な出来事が固定されるというイマジネーションがある。白い紙の上に朱の印泥を用いて印を押すという行為は、明らかに不可逆性の象徴である。
思索を言葉として定着させる行為もまた白い紙の上にペンや筆で書くという不可逆性、そして活字として書籍の上に定着させるというさらに大きな不可逆性を発生させる営みである。推敲という行為はそうした不可逆性が生み出した営みであり美意識であろう。このような、達成を意識した完成度や洗練を求める気持ちの背景に、白という感受性が潜んでいる。
白という感受性
「白という感受性」を説明するために、本文中から「解答根拠」になる部分を積極的に拾っていきましょう。
ポイントが2つあります。
第一に、「背景に~ある」という表現に着眼すると、〈直前の段落〉には、
~ 背景には、白い紙の上には訂正不能な出来事が固定されるというイマジネーションがある。
とあり、「背景」という「同じ語句」があります。
ということは、「白い紙の上には訂正不能な出来事が固定されるというイマジネーションがある」という部分は、「白という感受性」を説明するうえで、かなり重要な部分になります。
語の意味的にも、「イマジネーション」は「想像・想像力」という意味ですから、「感受性」という語との対応関係が認められます。

「イマジネーション」「イメージ」「想像」「想像力」のどれかは、答案に必須と考えましょう。
下書き
達成を意識した完成度や洗練を求める気持ちの背景に、白いものに何かを表現すると、訂正不能な出来事が固定されるという想像力が潜んでいるということ。
達成を意識した完成度や洗練を求める気持ち
さて、傍線部前半の「達成を意識した完成度や洗練を求める気持ち」については、そもそも比喩的な表現が一切ないので、このまま書いてもよいくらいの部分です。

これをどう答案化するか考えましょう。
まず、無視してはいけないのが「このような」という指示語です。
「このような」は、傍線部に直接係ってくる指示語です。つまり、傍線部と前に書かれている内容との密接性は強いので、「このような」が指すところは、答案に必須になります。
直前には「推敲~という美意識」という論点があります。「推敲」という語は、指示語で直接結ばれている文の主語ですから、工夫して取り込んでおきたいところです。
「推敲」という語をそのまま出してもいいですし、または、「推敲」の意味内容を取り込んで、「何度も考える」とか「逡巡する」とか「熟考する」といったような「説明」にしてもいいですね。

そうすると、
達成を意識した際、完成度や洗練を求めて推敲する(逡巡する・熟考する)美意識
などと書くことができます。
こうすると、「このような」が指す内容を取り込んだことになります。

あとは、「達成」「完成度」「洗練」という「傍線部そのままの語句」が、3つもそのまま答案に出てしまうのは「説明努力が足りない」となってしまうので、せめて2つくらいは言い換えておきたいです。
達成
「達成」は、本文で繰り返されている「定着」が類似表現なので、「定着」のほうを使用するのがいいですね。
完成度や洗練
「完成度や洗練」という「並列表現」は、できれば「一般化」したいです。

「一般化」は、「適切な語句に直す」という手段だけではなくて、「いったん辞書的意味にひらいて、そのうえで混ぜる」という手段があります。
今回はそちらでやってみましょう。
「完成度(が高い)」という語の辞書的意味は、「これ以上ない状態」「改良の手を加える余地がないさま」ということです。
「洗練」という語の辞書的意味は、「よりよいものにする」「練り上げる」ということです。

まとめると、「この上なくよいものに練り上げる」などといった説明が可能です。
以上の考察により、次のような答案が成立します。
解答例①
定着に際し、この上なくよいものにしようと推敲する美意識の背景に、白いものに何か表現すると、訂正不能な行為が固定されるという想像力が潜んでいるということ。

ここまできたら「背景」「潜んでいる」もなんとかしたいですよね。
こういうときは、「前半」と「後半」を思いきって入れ替えてみてもいいですね。
この傍線部の論理でいうと、入れ替えてしまったほうが「論理の順番どおり」になりますね。
論理の順(時間の順)に並べる

Aの背景に、Bが潜んでいる。
という表現は、
Bに影響されて、Aが発生する。
などと言い換えることが可能です。
ただ、これは、「こうしてもいい」ということなので、もちろん傍線部の構造を変えずに答案を作成してもかまいません。
文法がおかしくなければ、どちらでも得点は変わりません。
解答例
白いものへ表現は訂正不能な行為の固定であるという想像力に影響され、定着に際してこの上なくよいものにしようと推敲する美意識が生まれるということ。

この問題のキーワードは「イマジネーション」です。
そのまま書いてもOKですが、字数節約のために「想像」などとすることができますね。