

「小論文」については、市販の参考書を読むと、「こう書いたほうがいいよ」という方法がいろいろ書いてあるよね。

本によって「こう書きなさい」というスタイルが違うから、結局どう書けばいいのかわからないんだよな。

その「戸惑い」を解消することが今回の講座の目的だ!
「小論文」というのは、「論文の小型版」なのだから、そもそも「論文」をどう書くかということをざっくり押さえておけば、その「スモール版」を作るつもりで書くことができる。
そんなわけで、まずは「論文」というものの構成の基本を見ておこう。
みんなが大学生になったら、この「論文」の構成方法はそのまま使うことができるよ!

大学生が書く「論文」というものは、基本的に「パラグラフ・ライティング」の手法に基づいていると考えましょう。
まずは、「パラグラフ・ライティング」というものの評価項目を見ておきましょう。


いきなりこんなことを言われて「難しい」と思うかもしれないけど、これから話していく方法論にのっとれば、ここで示した①~⑧の評価基準はすべておさえることができるよ。

「パラグラフ・ライティング」の基本構成は「双括型(三部構成)」です。
よく日本語で「序論・本論・結論」と呼ばれるスタイルは、この「双括型」の書き方を意味していると考えてください。


ここでの「3部構成」というのは、「3段落で書く」ということではありません。
あとで述べますが、「Body」のところの段落が3つくらいになって、合計5段落くらいになることが基本的な構成です。

課題文があって、小論文の最初にその「要約」が求められている場合は、「要約」で段落ひとつぶんにしても大丈夫。
その場合は、「①要約ー②序論ー③本論ー④結論」という4部構成になると言える。
ただ、それは1,000字を超えるような長めの小論文の場合だから、通常の、400字~800字くらいの小論文の場合は、仮に最初に要約を書くのであっても、序論に含めてしまうほうがいいね。


入試の小論文の世界では、「課題文全体の要約だけで1つの段落にする」というケースは、1,000字を超える時とか、「まず要約せよ」といった指示がある時とか、けっこう珍しいパターンなんだ。

入試の小論文は、たいてい「600字」とか「800字」とかなので、「要約だけで段落1つぶんにする」という構成はとりません。
「要約だけで段落1つぶんにする」という構成は、「小論文」の試験としては例外的なパターンなので、いっかい無視します。
さて、「パラグラフ・ライティング」の話に戻ります。
「パラグラフ・ライティング」は、「Introduction → Body → Conclusion」の「双括型」になると言いましたが、このうち、「Body」は、3つのパラグラフに分けることが普通です。
すると、小論文全体は合計5つのパラグラフになります。この形式を、「ファイブ・パラグラフ・エッセイ」と呼びます。


「Introduction」は、「とりあえず大切なこと(テーマ・主張・端的な理由)」を最初に言っておく、という役割を果たす。
そして、「Body」の3つのパラグラフでそれぞれ論じたことを最後にまとめると「Conclusion」になる。
アメリカのエッセイトレーニングでは、「4つのスクエア」に分けたカードに、ボディ①、ボディ②、ボディ③について書いて、最後のスクエアに「まとめ」を書くという練習をするんだ。
それを「4スクエア・ライティング・メソッド」と言うよ。


「5パラグラフ・エッセイ」といっていたのに、「4つ」とはこれいかに?

どうしてかというと、最初の「Introduction」の部分は、最後の「Conclusion」と同じ内容になるからです。
要するに「Introduction」というのは、「最後に導かれる結論を、最初にも書いておきましょう」という場所なんですね。
ですから、この「4スクエア・ライティング・メソッド」で、最後の「まとめ」のところに書き込んだ内容を、「Introduction」にも書いておけばいいということなんです。


実際に入れてみないとわかりづらいから、「制服に反対する」というテーマでやってみよう。


4つめに書いた「まとめ」を、最初にも書いておくと、読者にとっては読みやすくなりますね。
それが「Introduction」です。
基本的には「テーマ・主張・端的な理由」を書きます。


これが、「5パラグラフ・エッセイ」です。

「原子力発電所に反対する」という構成図も見ておきましょう。


典型的な「5パラグラフ・エッセイ」ですね。
「Body」に3つの論点があります。
「費用がかかる」という「概括的な理由」に対して、Bodyでは、「購入に費用がかかる」「廃棄に費用がかかる」「事故処理(危機管理)に費用がかかる」というように、論点を分けて論じています。

「購入」「廃棄」「事故処理(危機管理)」というように分けてはいるけれども、「ざっくりとした理由」としては、「費用がかかる」という「1つの理由」になっているのだな。

そうです。
「総論(Intro.で書くべきこと)」と「各論(Bodyで書くべきこと)」と言ったりもします。
大雑把に言えば「費用がかかる」ということですけれども、細かく言えば、「購入面」「廃棄面」「事故処理(危機管理)面」でそれぞれ論じることができるのですね。
論文の真ん中の「Body」というところは、そういった「細かいこと」に分けて書いていく場所なのです。


Bodyのそれぞれのパラグラフは、まず「トピック(論点提示)」があって、その次に「サポート(具体的な事例やエピソード)」があるという流れが望ましいんだ。
大学で書くような本格的な論文の場合には、パラグラフの最後にも「トピック」を再提示して、ハンバーガーのような構図にすることもあるんだけど、「小論文」は字数が短いこともあるので、そこまではしなくて大丈夫。パラグラフの前半が「トピック(論点提示)」、後半が「サポート(例示)」というように考えておこう。

ここでひとつ、吉岡先生の『なるほど小論文講義10』という名著から、文章をひとつ引用します。


さっきまでの話に出ていた「5パラグラフ・エッセイ」だな!


「ザ・お手本」という小論文です。
字数が長ければ、「サポート」のところはもっと具体的な地名などが示されることになりますが、この字数ではこのくらいの具体性を示せれば十分ですね。
論点の分けかた

でも、論点を3つに分けるって、けっこう難しいよな。

同じ論点を別の角度から述べるという手段もありますよ。
具体的に言うと、
Body① その論点の本質的な説明する。
Body② 比較できるものと対比する。
Body③ 経緯や影響(原因や結果)について書く。
という方法です。
Descriptive paragraph (説明のパラグラフ)
Comparative paragraph (対比のパラグラフ)
Cause/effect paragraph (因果のパラグラフ)
などと呼びます。

ふむふむ。

たとえば「太陽光発電」を推し進めたい場合、
①太陽光を利用して発電するという特徴を説明して、
②火力や水力や原子力などと比較して、
③現状はこうなっていて、これすればこうなるということを書く
という構成にすると、このパターンに一致します。
このように、Bodyの3つのパラグラフを
①本質的説明 ⇒ ②対比 ⇒ ③因果(経緯や展望)
という流れにすることもけっこうありますね。


たとえば、「対比+例示」の1つのパラグラフだけでBodyを構成してもいいということです。


Body では、論点をシンプルに3つに分けてもいいし、ひとつの論点を「説明⇒対比⇒因果」という構成に分けてもいいし、そのうちのひとつ、たとえば「対比」にしぼって書いてもいいということになります。
字数の短い「小論文」の世界では、「対比」にしぼって書く模範解答もけっこう多いですね。
たとえば、「〈案A〉と〈案B〉のどちらに賛成するか?」といったような、そもそも「対比」がメインテーマになっているような題材の場合は、「対比」に的を絞って書いてしまうほうがいいですね。
そういう場合には、
① A案の説明 + 例示
② B案の説明 + 例示
という段落分けでもいいですし、
① A案の説明 ⇔ B案の説明
② 例示
という段落分けでもかまいません。

「例示」だけでひとつのパラグラフにしてもいいのか?

小論文全体で「トピック」をひとつにしぼってしまって、それに対する例示が1つだけ挙げられるような構成の場合、そのようにしてもかまいません。
ただし、「具体例のパラグラフ」で1つの段落にするのであれば、その段落内は、「前半よりも後半をいっそう具体的に書く」としたほうがいいですね。

いろいろな話が出てきたので、「こう書くのはあり」というテンプレートをいくつか見ておきましょう。
説明① → 説明② → 説明③ (説明 → 対比 → 因果)


左の書き方が普通ですが、右の書き方でも大丈夫です。
なお、ここでは「説明①」「説明②」「説明③」と書いていますが、先ほどみたように、ひとつの論点について「説明 ⇒ 対比 ⇒ 因果」と書いてもいいですね。
あるいは、Bodyを「説明+例示のパラグラフだけにする」とか、「対比+例示のパラグラフだけにする」というように、的を絞ってもかまいません。制限字数が短ければ、その方法を使うことも多いですよ。


「3つの論点に分けて論じる」という正攻法であっても、500字くらいの字数が短い小論文の場合は、○がついているとことを一気に1つのパラグラフにしてもかまいません。
先ほど例に挙げた文章で言うと、Bodyは次のように1段落にまとめてもよいことになります。


さらに、200字とか300字くらいの極端に短い小論文の場合は、文章全体を一気に1つのパラグラフにしても大丈夫です。

文章すべてを1つの段落にしてもいいものなのか?

制限字数がとても短ければ、むしろそうしてしまったほうがいいですね。
というのも、「段落1つぶん」というのは、通常150字~300字くらいでつくるのですよ。
ですから、全体の制限字数が「200字以内」とか「300字以内」とかである場合、複数の段落に分けることを求めている出題とは言えません。
ですから、300字以内であれば、いっそ「小論文全体(Introduction・Body・Conclusion)」を一気に1つのパラグラフにしたほうがいいと考えておきましょう。
ただし、その場合には、「なぜなら」「つまり」「まず」「次に」「たとえば」「このように」「したがって」といった「展開の目印」はきちんとつけましょう。
これらの「展開の目印」は、複数の段落に分けて書く場合でも必須なのですが、字数の関係で、やむをえず1つの段落にまとめなければならない場合は、いっそう大切だと考えてください。こういう「目印」がないと、構成がわからなくなってしまいます。

では、他のテンプレートも見ておこう。
メリット ⇔ デメリット


問題に対する「解決策」のようなものを具体的に出す場合には、左図のようにBodyを2つに分けて、「メリット」と「デメリット」をそれぞれ書く方法もいいですね。
右図のように、「メリットとデメリット」を一気に書いて、次のパラグラフで「具体例」を挙げるという構成も「あり」です。


〇をつけたところを「1つの段落」にしてしまうのも「あり」です。「一方」とか「たとえば」といった「目印」を必ず書きましょうね。
また、全体の字数が300字以内であれば、全体を1つの段落で一気に書いても問題ありません。しつこく言いますが、「なぜなら」「まず」「一方」「たとえば」「このように」「したがって」などといった「目印」を必ず書きましょう。
対立意見 ⇔ 自説(持論)

「比例代表選挙について」とか「死刑について」とか「同性婚について」といったように、社会全体が「賛成」と「反対」で議論しているような問題については、「自分とは反対の意見」を説明して、それに対して反論していくという構成も効果的だよ。


市販の参考書では、けっこうよく使われる構成ですね。


これまでに見てきたいくつかのテンプレートと同様に、〇をつけたところを1つのパラグラフにまとめてもかまいません。「目印」はちゃんと書きましょう。
300字以内であれば、文章全体を1つのパラグラフにしてしまっても大丈夫です。
できるかぎり、テンプレート以外の構成では書かない。


「小論文」という試験科目になっている以上、字数が長くても短くても、「双括型(3部構成)」で書くことをおすすめします。
制限字数が短ければ、「Bodyの論点を1つにする」とか、「文章全体を1つのパラグラフで書ききる」とか、そういった工夫でクリアしましょう。
制限字数が長ければ、「Body」の「論点」を複数にすればいいだけです。
あるいは、「説明⇒対比⇒因果」という構成で3つに分ければ、自ずとけっこうな字数を書くことになります。
つまり、1,200字とか、2,000字とか、試験としては「長め」に分類できる小論文は、単純に「5パラグラフ・エッセイ」としての正攻法で書けばいいということになります。