(四)「精神分析家の仕事も実は分裂に彩られている」とはどういうことか、説明せよ。

まずは下書きを示します。
〈下書き〉
精神分析家は患者の心の一部分に同化することを通じて、患者を理解しようとするため、患者の自己の複数の部分に同化した結果、分析家の自己が分裂するということ。
〈より高得点へ〉
*本文では、「精神分析家の仕事も」というように、「も」がついているので、念のため、「落語家同様」という付け加えをしておけるとよい。
*「患者の心の一部分に同化する」という情報と、「患者の自己の複数の部分に同化」という情報が、そもそも重複しているので、「複数」という論点がある後者を活かし、前者はカットしたほうがよい。
*〈⑨段落〉には、「そうして自分でないものになってしまうだけでは、精神分析の仕事はできない」と書かれているので、そこに続く論点も拾っておきたい。そこでは、
分析家はいつかは、分析家自身の視点から事態を眺め、そうした患者の世界を理解することができなければならない。
と書かれている。
つまり、「分裂」している「複数の自己」のなかには、最終的には「分析家自身の自己」も入っていなければならないのである。そのことも含めて、答案が完成する。
解答例
精神分析家の仕事は、自身の視点も持ちつつ、患者の理解のために、患者の複数の自己に同化する点で、落語家同様、多様な自己に分裂しているということ。
参考(再現答案)
精神分析家の仕事も落語家同様、精神分析を行ううちに分析家自身が患者の自己の複数の部分に同時に同化することを、患者の理解に利用するということ。