(一)「このこころを凍らせるような孤独」

(一)「このこころを凍らせるような孤独」とはどういうことか、説明せよ。

この問題の「主語(主部)」はけっこう長くなるので、書き方に工夫が必要です。

〈ポイント〉「列挙された情報」は「一般化」する。

同じ価値をもって並んでいる複数のものを答案に出すときは、

① 複数のものを書ききるか、 
② 抽象化してまとめる。   (一般化)
 

どちらかの手段を採用する。

通常の試験では②「一般化」が期待されています。

答案の下書きを作ってみたときに、「同等の価値で列挙されている情報」がある場合、まとめてしまうことができないか考えてみましょう。

無理ならそのまま書くしかありませんが、「一般化」を達成できたほうがいっそう高度な答案になります。

「一般化」しつつまとめていくと、次のように書いていくことができる。

◆落語家も分析家も、観衆や患者からの期待に応え、~
◆落語家も分析家も、自分に期待をかける他者からの要求に応え、~

比喩の解除

さて、主題(主語・主部)は設定できたので、「こころを凍らせるような」という比喩を解除しよう。

「こころを凍らせるような」という語感からイメージできることは、「恐ろしい」「ぞっとする」といったニュアンスである。それが表現されている箇所を探そう。

落語家も、分析家も、観衆や患者の期待に応え、成果を生み出すことができなければ、客や患者が来なくなるという点で自分の人生が脅かされる

この「自分の人生が脅かされる」という論点に言及できれば、「こころを凍らせるような」という比喩を解除したとみなしてもらえる。常に重要なことは、「論点への言及」なのである。

最後に「孤独」である。「孤独」は、「客観語」であるので、語そのものは、そのままでも減点はされない。しかし、「傍線部内の熟語・・はできるかぎり言い換える」という方法論にしたがい、工夫をしてみよう。

ここで、「設問」が「どういうことか」となっている点に注目してみよう。

「孤独」は「体言」であるので、普通は「どういうものか」と問われるはずだが、ここでは、「~ことか」と問われている。

つまり、「動作・状態」で答えるような問い方になっている。

これは、「述語化してよい」というメッセージであると考えられる。

このような設問の場合、「体言」を「述語化(用言化)」して解答化してみましょう!

その観点で「孤独」の言い換えを探すと、「たったひとり(で事態に向き合う)」といった表現がある。これが「孤独」の「動作・状態」的表現であると判断できる。

以上により、次のような答案が成立する。

解答例

落語家も分析家も、観衆や患者の期待に応え、成果を生み出さなければ、対価を得られなくなり、自分の人生が脅かされるという事態に、一人で向き合わねばならないということ。

参考(再現答案)

落語家も分析家も、過剰なほどに注がれる他者からの期待にさらされながら、何らかの成果を生み出すという要求に、自身の人生を守るため、たった一人で応えているということ。  

本来であれば「どういうものか?」と問われるべき問題が、「どういうことか?」となっている場合、たいていは傍線部内の「体言」を「述語化」したような表現が本文内にあります。今回の問題でいえば、「たった一人で応える」というところが、「孤独」の述語化として成立しています。

難問になるほど、そういった「言い換え表現」がないことがありますが、そのときは自力で「述語化」しましょう。