(三)「戦争によってこの年老いた元日本海軍の兵士たちの人生の時間の、ある部分が止まってしまった」とあるが、どういうことか説明せよ。
*最大のポイントは、傍線部を含む一文の最後にある「のだろう」である。いわゆる「のだ文」であるので、〈傍線部ウ〉は、その直前の文を「言い換えた文」だと考える。
したがって、直前の、
物言わぬ「戦友の霊の目」を背に負って生きてきた戦友の「思い」が、死んだ者が可哀想だ、生き残って申し訳ないという「思い」が、慰霊行為を導き出しているのである。
という論点は、「答案に必須」と考えられる。
しかも、ここも「のだ文」であるので、さらにさかのぼると(「~ではない。~でもない」という対比項の部分をとばしてさかのぼると)、
戦死した戦友の霊を「慰めている」のである。
と書かれている。ここも「のだ文」なのであるが、さかのぼりすぎると段落を超えてしまうので、いったんここまでにしておこう。
傍線部の後ろ側には「添加」のラベルである「そして」があるので、それ以降の重要度は高くない。
傍線部の「前」の情報で答案をまとめると、次のようになる。
〈合格答案〉
元日本海軍の兵士たちは、戦死した戦友が可哀想だ、自身が生き残って申し訳ないという思いゆえに、戦後、慰霊を続ける人生を送ってきたということ。

ここまで書ければ十分ですが、傍線部の「時間の、ある部分が止まってしまった」という表現に対応している部分がないように感じられますので、そこをうまく答案化したいものです。
解答例
元日本海軍の兵士たちは、戦死した戦友の哀れさ、生き残った申し訳なさを感じ、慰霊を続ける人生を送ることになった点で、戦後も戦時の感情を持ち続けることになったということ。
参考(再現答案)
戦争で生存した兵士は戦死した仲間に対して負い目を感じ、常に霊の目を意識しているため、戦後いくら時間が経っても、心の一部が戦争から離れられないということ。