(一)「生きている日本人は、生きているというだけで、霊に対して弱い立場に置かれていたのである」とはどういうことか、説明せよ。

まずは必要な論点を収集しましょう。
*傍線部自体が「のだ文」であるので、直前にある
「慰霊」という行為は、 ~ 霊に対する生者の心の内部に発生する「後ろめたさ」「負い目」を浄化する行為であった。
という論点は答案に必須である。
また、今回の場合は、傍線部の後ろにも「のだ文」があり、そこに、「つねに無意識のうちに気にしている」とある。この「気にしている」が、「後ろめたさ」や「負い目」と同義だと考えられるので、「無意識」という熟語はキーワードとして答案に取り込みたい。
以上のことから、答案の〈骨格〉は次のようなものになる。
〈答案の骨格〉
日本人の生者は、つねに無意識に霊の目を気にしており、生きているだけで、霊への「後ろめたさ」や「負い目」を心の内部に発生させるということ。

傍線部の「弱い立場に置かれていた」ということを説明するには、このくらい書ければOKですが、直前の文の論理関係を見ると、
「慰霊」という行為は、~「後ろめたさ」や「負い目」を浄化する行為
となっていますから、「慰霊」「浄化」といった語について、無視はしたくないですね。
〈合格答案〉
日本人の生者は、つねに無意識に霊の目を気にしており、生きているだけで、霊への「後ろめたさ」や「負い目」を心の内部に発生させるため、慰霊をすることでその心性を浄化しようとするということ。

しかし、これでは「表現」として、かえってわかりにくくなってしまいました。
「論点」は取れていますが、「表現」で失点しかねない答案です。
どこがよくないのでしょうか?
次の「高得点答案」と比べてください。
〈高得点答案〉
日本人の生者は、霊からの視線を常に無意識に気にかけており、慰霊による心の浄化を必要とするほど、生きているだけで霊への後ろめたさや負い目を感じてきたということ。

「高得点答案」のほうが、「傍線部の結論部分」と「答案の結論部分」の対応関係がわかりやすい。

今回の「後ろめたさ」「負い目」は、「ごくありふれた日常語(ふつうに理解可能な語)」なので、無理に言い換える必要はありません。
ただし、「後ろめたさ」だけ、または「負い目」だけを解答に書き込むのはNGです。傍線部とかかわりが深い場所で、並立的に列挙されているからです。
このような場合、完全枚挙か一般化をするべきです。
「罪悪感」などと一般化してもいいですし、「二語」しかないので、両方そのまま書いてもいいですね。
なお、「 」がそのままついていても、別に減点されるわけではありません。
参考(再現答案)
日本人は殺した者の怨霊を恐れるだけでなく、家族や共同体の中の死者にも、自分は生きているという負い目や後ろめたさを感じており、彼らの目を常に気にしているということ。