小論文の構成

小論文の課題が出て、しみじみと落ち込んでいるよ。

「俺」じゃなくて「私」とか、「だぜ」じゃなくて「である」とか、いちいちうんざりだぜ。

2人とも小論文は好きじゃないのですか?

逆に聞こう。小論文の課題が好きな猛者などいるのか?

いつもあの赤ペンの量に目がつぶされそうになるぜ。

今回の課題は何字くらいですか?

1,000字くらいだよ。

テーマはどんなもの?

社会の問題に目を向けて、解決策を示そう、とかそんなやつだ。

「解決策」が論の中心になるのですね。それなら、200字ずつくらいの形式段落を5つか6つ作って、
①困っていること
②その原因
③解決策
④解決策
⑤解決策
⑥まとめ
って書くといいですよ。

そんな簡単に解決しないだろ。

社会がおれたちの案など求めているものか。

いやまあ、たしかに鮮やかな解決策が出てくるのを期待しているわけではないけれど、「社会が直面している問題に対してどんな考えを持っているか聞いておきたい」っていう意図はありますよ。
「解決策急募!」っていうよりは、「きみの考え方が知りたい」っていうものですね。

でも、気球温暖化の解決策とか、1,000字では書けないぜ。

それはそうなんですけど、テーマを小さくしてみたり、自分たちの生活水準でできる解決策を提示したりしていけば、それなりにまとまりますよ。

光明が見えてきた。楽な方法を教えてほしい。

なんだかんだ言って、まずは「型」をおさえておくといいですね。
自分なりの「これが書きやすい」っていう「型」があると、制限時間があっても内容面の思考に時間を費やせますからね。

どんな「型」がいいんだ。
基本は3部5段落(3パート5パラグラフ)

論文というものは、通常、10個も20個もパラグラフを分けていくものなんですけれど、1,000字くらいだと、だいたい5つのパラグラフに分けるくらいですね。

パラサイト?

パラライカ?

寄生生物でも、ロシアの代表的な弦楽器でもないよ!
パラグラフというのは、「形式段落」のことです。

じゃあ「形式段落」でいいのに。

突然外来語を登場させて、カッコつけだしたな。

日本語の「段落」だと、「形式段落」と「意味段落」があって、混乱するから、「形式段落」を意味するパラグラフを使ったほうが、誤解が少ないと思って・・・。

まあ、言いたいことはわかった。パラグラフでいこう。

小論文は、字数次第でいろいろな書き方があるけど、まずは根本的な「型」を知るために、1,000字の小論文の構成を考えてみましょう。

1,000字だと根本的な「型」がわかるの?

小論文は、どんな字数であっても、大きく分ければ「3つの構造」に分かれるんです。
500字の小論文であっても、2,000字の小論文であっても、「大きく分ければ3つの構造」っていうのは同じことです。

3つのパラグラフってこと?

いえ、パラグラフは、200字くらいでひとつになります。
たとえば1,000字あれば、パラグラフは5つくらいになります。

ふむ。

この「3つの構造」というのは、日本語では、
①序論(テーマを語る)
②本論(根拠を語る)
③結論(主張を語る)
と言います。
英語では、
①Introduction(論文全体の紹介)
②Body (具体的内容)
③Conclusion (まとめ)
と言います。
細かいところはけっこう違うんだけど、「3つに分けるという点では似てる」くらいに考えておきましょう。

序破急みたいなもんかな。

能楽の曲の構成のルールみたいなやつか。

序破急は世阿弥の『風姿花伝』に書いてあることで有名になりましたが、もともとは雅楽の世界で言われていた概念です。
『風姿花伝』に書いてあることは、芸道全般にあてはまることも多いのです。

紅茶花伝?

残念ながら俺は午後ティー派だ。

とりあえず先に行きましょう。
「3つの構造」は、原則的に、最初と最後はひとつのパラグラフにします。テーマが2つあるのも読みにくいし、まとめが2つあるのも読みにくいからです。
真ん中はたくさんあってもいいです。
そのため、基本的な段落構成は、次のようになります。
① 序論(パラグラフは1つ)
② 本論(パラグラフはたくさんあってもいい)
③ 結論(パラグラフは1つ)

見えてきたぜ。

ただし、①の序論にかんしては、長くなるなら2つに分けてもいいです。
たとえば、ある文章に対する賛否を書く場合、
まず最初の段落でその文章の要約をします。
そして、その文章に対する自分の意見を書きます。
その「要約」と「意見」は、別々のパラグラフになってもかまいません。ただし、パラグラフを分けるのであれば、漫然とわけるのではなく、「事実(要約)」と「意見(考え)」に分かれている必要がありますね。
3部5段落(6段落)

いま、課題をきちんと見たら、こうなっていた。
SDGsのテーマの中から一つ選び、次のように書いてみようというものだ。
①社会的に困っていること
②その原因と考えられること
③すでに存在している解決策その1
④すでに存在している解決策その2
⑤自分で考えた解決策
⑥まとめ

なるほど。そのケースだと、「解決策」を紹介していくのが論文の「骨格」なので、
①②が序論
③④⑤が本論
⑥が結論
という感じですね。

「序論」はひとつのパラグラフが望ましいと言っていたが、このように、「事実」と「考え」に分けるなら、ふたつにしてもいいということだな。

そのとおりです。

「本論」というのは、どんなにたくさん書いてもいいんだったな。

そのとおりです。
まとめましょう。
序論のパラグラフは1つか2つ(2つにするなら事実と考えに分ける)
本論のパラグラフはいくらでもいい
結論のパラグラフは必ず1つ

でも、「本論」のパラグラフがいくつあってもいいって言っても、パラグラフっていうのは何か意味があって区別されるわけだから、適当に分けちゃいけないんだろうな。

たしかにそんな気がする。

コツはまさにそこです!
「本論」のパラグラフが複数になる場合には、「意味を持った区別」が必要になるんです。
本論(Body)のパラグラフ同士は「ヨコの関係」か「タテの関係」にしよう。

なんか急に黒板みたいなの出てきた。

いったん、今回のSDGsの課題からは離れて、一般論を話します。

いいだろう。

「タテ」はたとえば、
「昔」と「今」(時間の流れ)
「原因」と「結果」(因果の流れ)
といった、「前後関係」のことです。
「ヨコ」はたとえば、
「第一の理由」と「第二の理由」(複数の理由)
「西欧」と「日本」(比較)
「意見A」と「意見B」(対比)
といった、「並列関係」や「比較関係」のことです。

「理由」と「具体例」なんていうのもありなのかな?

大丈夫です。
それだと、ひとつのことを詳しく掘り下げていっていることになるから、「タテの関係」ですね。

自分とは対立する意見を示して、それに反論するという方法は?

大丈夫です。
その場合は、「反論」のほうが明らかに重要になりますから、単純な比較ではなくて、ある意味で「深掘り型」となります。ですから、どちらかというと「タテの関係」ですね。

それにさらに具体例をつけるというのは?

いいですね。
① 自分とは反対の意見
② ①に対する反論
③ 具体例
といった具合に、3つのパラグラフにすることもできます。
この場合、字数によっては、①と②を同じパラグラフにしてもいいし、②と③を同じパラグラフにしてもいいでしょう。
この①②③をひとつのパラグラフに押し込むのはちょっときついでしょうね。

「理由」が2つあって、それぞれに具体例をつけたい場合は、どうすればいいの?

理由①+具体例①
理由②+具体例②
という2つのパラグラフにすればいいですね。
そうすれば「パラグラフ同士」は「ヨコの関係」になります。

理由①
理由②
具体例
っていう書き方はどう?

それはやめたほうがいいです。
どうしてかと言うと、「タテ」と「ヨコ」が混在しているからです。
とにかく、「本論」の複数のパラグラフは、「タテならタテ」、「ヨコならヨコ」と統一されていることが大切です。

ということは、「本論」のパラグラフが3つになるときは、注意が必要だな。

そのとおりです。
でも、「本論」のパラグラフが5つも6つもあるのは、「小」論文ではなくて、もはや論文だから、ひとまず「3つ」になるケースくらいまでおさえておけば大丈夫ですよ。
〈ヨコパターン〉
序論 意見
本論 A.理由①+具体例
B.理由②+具体例
B.理由③+具体例
結論
〈タテパターン〉
序論 意見
本論 A.自分とは反対の意見
B.Aへの反論
C.具体例
結論

「本論」のパラグラフが3つになる場合というのは、
「ヨコ」の「理由3つパターン」か、
「タテ」の「反対意見への反論と具体例パターン」の
どちらかで決着がつきます。

でも、ヨコパターンで理由を3つも書くなんて困難。

理由をひとつしか思いつかないなら、序論の段階でまとめてしまえばいいのです。すると、
①事実
②意見・理由
③例示
④例示
⑤例示
⑥まとめ
となります。

今回のSDGsの小論文で指定されている「型」に似ているな。

そのとおりです。
今回のSDGsの小論文は、「ヨコパターン」で書くように指定されているようなものですね。
ただし、「例示」だけでひとつのパラグラフを書く場合には、コツがあります。文を2つ以上にして、後半をより限定的にするのです。
たとえば、医療機関では、 ~ 。 実際、済生会病院では、 ~ 。
とか、
たとえば、江戸時代の日本では、 ~ 。 その時の浅草寺では、~ 。
といったように、パラグラフの中の「後半の文」をいっそう具体的にすると、説得力が増していきます。

なんだか書けそうな気がしてきた!

ではまたの機会に。