記述答案の素材は本文内か辞書内に存在する。

国立二次の記述問題は、時間内に満点を取ることはできない。

現代文の記述問題では、あらゆる問題に広く行き渡る「満点を取る方法」はありません。

「本文中にある語句のみで答案を構成しよう」という方針ですと、「本文中にある語句のみでは答案を構成できない問題」にあたったときに、必ず失点します。

「できるかぎり自分の語彙力で言い換えよう」という方針ですと、「本文中にあるキーワードを答案に取り入れてほしい問題」にあたったときに、必ず失点します。

「どんな問題にあたっても、かならず高得点が取れる方法」というのはなかなかありません。実際、国公立二次試験の国語で「満点者」が出ることはありません。特に現代文領域は、制限時間内に全問パーフェクトな答案を仕上げることは無理筋です。本職にしている大人でもできません。

満点主義に陥らないほうが、むしろ総合的な得点は上がる。

本格的な記述問題に関しては、現代文は満点が取れる科目ではないと考えたほうが、方法論を複雑にせずに済みます。

方法論を簡素化して、すべての問題で6割超えをねらいにいくほうが、結果的に総合的な点数が上がります。古典に時間を回すこともできますし、現代文領域だけで見ても、思考の手順と解答の型を決めておくほうが、よりいっそう内容面の精査に時間を使えるので、よい答案を書くことができます。

さて、その考え方や方法については、多くの指導者がそれぞれ異なることを言いますので、受験生は混乱することになります。

どの指導者も、一理あることを述べます。誰かが全面的に正しくて、誰かが全面的に間違っているというわけではありません。

問題集も様々なものが出ています。総合的な観点では『入試現代文のアクセス』が最もおすすめの本ですが、同じ河合出版から刊行されている『 はじめての入試現代文』もおすすめです。制限時間内に得点を最大化するという考え方において、必要なことにしぼってわかりやすく説明されています。

記述について述べている箇所を引用します。

 では、「自分の言葉」で書くとは、一体どういうことなのでしょうか? それは、自分の語彙力で他の表現にイイカエることなんですね。本文中に利用できる語句がない場合、正解選択肢を作成するぐらいのつもりでイイカエれば良いのです。ところが、そうした原則を知らないままで書き始めると、解答はデタラメなものになってしまいます。たとえば、傍線部を説明しなければならないのに、「普遍」を「普遍」のままイイカエずに書いてしまったり……。いかんですね。
 もちろん、何から何までイイカエなきゃいけないわけではありません。たとえば、今回の例題ですと、「ヨーロッパ」は一般的な言葉なので、これ以上イイカエる必要はないでしょう。しかし、基本的には、傍線部の語句を用いずに表現することを心掛けておくと無難です。「ヨーロッパ」であれば「欧州」などの言葉にイイカエらえれますよね。

木村哲也『はじめての入試現代文 正解へのアプローチ』 下線は引用者

記述については、結局、この考え方が、最もシンプルで最も得点を最大化できる考え方です。

大原則として、

傍線部の語句は、傍線部の語句を用いずに表現するほうが無難

という考え方があります。

「言い換える必要がない表現」というのはもちろんあります。しかし、試験の本番中で、「これは言い換えなくても許されるかな……」と考えて区別する時間はほとんどありません。したがって、「人」とか「家」とか「馬」とか「駅」といったような「ごくありふれた一般的な表現」以外は原則的に言い換える姿勢でいたほうが、方法論を固定できます。

原則①

傍線部内の語句は、ごくありふれた一般表現以外は言い換える。

傍線部の説明問題の「基礎の基礎」は、部分部分で「言い換える」という作業です。

「言い換え」のための素材は、まずは本文中から探します。傍線部の語句と同内容であり、かつ、傍線部よりも具体的に述べている部分が「正解の素材」です。

具体的と書きましたが、「具体例」を書くわけではありません。「例示」よりは一段階抽象性が高い表現を探します。「具体例」は取り換えがきくものであり、筆者の意見や考え「そのもの」ではないからです。

原則②

言い換えの素材は、まず本文中から探すが、なければ辞書から探す。

「具体例」よりは一段階抽象性が高い説明表現を探すと、多くの場合は、それがあります。そして、それが正解に必要な「素材」となります。

しかし、問題によってはその「素材」が見当たらないこともあります。たいていの場合は探し足りないだけなのですが、本当に「ない」場合もあります。その場合、解答者(受験生)は、そこを自力で解答化する能力を試されています。

答案の全要素を「自力」で解決する問題はまずありませんが、「4分の1程度」をそのように処理しなければならない問題はけっこうあります。

とはいえ、語句のイメージから好き勝手に書いても説明にはなりません。そのようにしても部分点は入りませんし、意味が大きくずれれば減点対象になります。

そこで、「自力」でなんとかする部分の解答根拠は、辞書に頼ることになります。辞書に載っている意味を使用して答案化しましょう。

ところが、試験中に辞書を開くことはできません(辞書持ち込み可の試験もありますが、稀です)。試験中は、記憶の中の辞書を開くことになります。これこそが、その人の語彙力です。

たとえば、傍線部内に「逡巡」という語があったとします。その語句としての言い換えが本文中になければ、辞書的意味を援用し、答案には「ためらうこと」と書けばよいことになります。

まとめ

現代文の答案に使用できる表現は、本文中か、辞書の中に存在します。

傍線部の表現は、ありふれた一般的語句以外は言い換えます。内容的に一致する表現が本文中にあれば、「あったぞ」とそれを使えばいいですし、本文中になければ、「ないぞ」と判断して、辞書的な語義で言い換えれば済みます。

たいていの場合は本文中にありますから、まずは探すことが鉄則です。

本文中の語句を上手に使用できれば半分以上は得点できるという態度が、記述現代文の基本的態度です。本文中に適切な語がなければ、部分的に自分のことばで説明することになりますが、答案のすべてが「自分のことば」になる問題というのはありません。