それが大人の権威を支える現実的根拠であった。

必要な語句の重要度に差をつける

産業革命以前の大部分の子どもは、学校においてではなく、それぞれの仕事が行われている現場において、親か親代わりの大人の仕事の後継者として、その仕事を見習いながら、一人前の大人となった。そこには、同じ仕事を共有する先達と後輩の関係が成り立つ基盤がある。それが大人の権威を支える現実的根拠であった。そういった関係をあてにできないところに、近代学校の教師の役割の難しさがあるのではないか。つまり学習の強力な動機づけになるはずの職業共有の意識を子どもに期待できず、また人間にとっていちばんなじみやすい見習いという学習形態を利用しにくい悪条件の下で、何ごとかを教える役割を負わされている、ということである。

「学校を糾弾する前に」

傍線部「それが大人の権威を支える現実的根拠であった」とあるが、それはなぜか、説明せよ。

「なぜか」の問題は、「なぜ」がどこに係るのかを考えてみましょう。

「なぜ」が直接係るところが「結論」であり、たいていの場合は〈述語〉になります。

「なぜか」の問題は、「なぜ」が直接係るところの「前」までを説明する必要があります。

「結論そのもの」も答案に含めたほうがいい問題もありますが、例外的なので、今回はその話はしません。

では、とりあえず、傍線部に「なぜ」を入れてみましょう。

それが なぜ 大人の権威を支える現実的根拠であったのか
前提            結論

「なぜ」の前にあるのは「それが」です。

指示語なので、何を言っているのかまったくわかりません。

まずはこの「それ」を解決しましょう。

同じ仕事を共有する先達と後輩の関係が成り立つ基盤
大人の権威を支える現実的根拠であった

ひとまず「それ」を解決することはできましたが、「同じ仕事を共有する先達と後輩の関係が成り立つ基盤」があると、どうして大人の権威が支えられるのか、まったくわかりません。

つまり、この文には「論理の飛躍」があります。

同じ仕事を共有する先達と後輩の関係が成り立つ基盤

【                 】から、

大人の権威を支える現実的根拠であった

上の図でいうと、【         】の部分が抜けています。

この穴を埋められる論点を拾うことができれば、答案を作ることができます。

「同じ仕事を共有する先達と後輩の関係が成り立つ基盤」があるところで、どんなことが起きているから、大人は権威を持っているのでしょうか。

そのことは、さらに前に書いてあります。

産業革命以前の大部分の子どもは、学校においてではなく、それぞれの仕事が行われている現場において、親か親代わりの大人の仕事の後継者として、その仕事を見習いながら、一人前の大人となった。

「子ども」は「大人」の「後継者」であり、「大人の仕事」を「見習う」ことで、「一人前の大人」になっていったのです。

逆から言えば、「一人前の大人」になるためには、「大人の仕事」を「見習う」ことで「後継」することが必須だったのです。だからこそ、「大人」は「権威」を持っていたのです。

ということは、この部分の要点を過不足なく書くことができれば、「論理の飛躍部分」を埋めることができます。

前後関係を整理して書くと次のようになります。

下書き

産業革命以前、
学校においてではなく、
それぞれの仕事が行われている現場に
同じ仕事を共有する先達と後輩の関係が成り立つ基盤があり、
大部分の子どもは、
親か親代わりの大人の仕事の後継者として、
その仕事を見習いながら、
一人前の大人となったから。

( → 大人の権威は支えられた)

どう見ても長いですね。

残す表現と、カットする表現を区別しましょう。

まず「同じ仕事を共有する先達と後輩の関係が成り立つ基盤」は、傍線部そのものの主語ですから、最も重要です。表現を圧縮するのはかまいませんが、この意味内容をカットすることはできません。

また、「大人(の仕事)を後継」することで「一人前の大人になった」というポイントは外せません。これこそ、「大人の権威」に直結する「理由」であるからです。

では、他に「残すべき論点」はどれになるでしょうか?

ここで、ちょっと傍線部の後ろを見てみましょう。

そういった関係をあてにできないところに、近代学校の教師の役割の難しさがあるのではないか。つまり学習の強力な動機づけになるはずの職業共有の意識を子どもに期待できず、また人間にとっていちばんなじみやすい見習いという学習形態を利用しにくい悪条件の下で、何ごとかを教える役割を負わされている、ということである。

傍線部の後ろの「つまり」の後では、近代以降は、「職業共有の意識」が期待できないこと、「見習い」という学習形態を利用しにくいことが述べられています。

ということは、逆を言えば、近代以前には、「職業共有の意識」が期待できたのであり、「見習い」という学習形態を利用しやすかったことになります。その点から、

◆職業共有の意識
◆見習い

という論点は重要になります。

合格答案

同じ仕事を共有する先達と後輩の関係が成り立つ基盤があるからこそ、大部分の子どもは、大人の仕事の後継者としてその仕事を見習いながら、一人前の大人となったから。

ハイレベル答案

他にも入れたほうがよい論点を考察しましょう。

傍線部の後ろでは、「近代学校」の難しさが述べられています。ということは、傍線部の前は、「近代よりも前」のことを述べていることになります。同じ段落内で状況が対比されていることからも、傍線部の前の時代区分については、はっきりさせておいて損はありません。そのことから、

◆産業革命以前

という時代区分は書き込んでおきましょう。傍線部の話がいつのことであるのかをはっきりさせておくのです。「近代以前」と書くことも可能です。

トップレベル答案への+α

傍線部の後ろが「学校」での話であるのに対し、傍線部の前は「学校においてではなく、それぞれの仕事が行われている現場」の話であることがわかります。

傍線部の真後ろで「学校」の話をしており、傍線部の前では「学校ではない場所」の話をしているわけですから、傍線部の時点では「どこ」の話をしているのか、はっきりさせておくほうがよいです。そのことから、

◆仕事が行われている現場

という場所は書き込んでおきましょう。「仕事場」などと短く書くことも可能ですね。

以上により、次のような答案が成立します。

トップレベル答案

産業革命以前、各仕事現場には同じ仕事を共有する先達と後輩の関係が成り立つ基盤があり、大部分の子どもは、大人の後継者として仕事を見習い、一人前の大人となったから。

採点基準 ⑤点

産業革命以前、             ①  「近代以前」も可
各仕事現場には          (ないと減点)
同じ仕事を共有する先達と後輩の関係が成り立つ基盤があり  ①  
             (「先達と後輩に職業共有の意識があり」なども可)
大部分の子どもは         (ないと減点)
大人の後継者として           ① 
仕事を見習い              ①
一人前の大人になった          ①
から。             (理由表現でないと減点)

選択肢なら……

近代以前の仕事の現場では、同じ職業にともに取り組むなかで、半人前としての子どもは先輩である大人の仕事を引き継ぐ仕方で技能を習得したから。

選択肢問題であれば、このくらいにまとめてくるかもしれませんね。